「吉田調書」など公開 菅直人元首相は福島原発事故で何を批判されているのか?
(5)その他の「菅直人批判」
こうした菅氏への批判報道にとくに積極的なのは読売新聞、産経新聞などだといわれていますが、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「震災報道が少し落ち着いた頃からは、右も左も関係なく、ほぼすべてのメディアが問題視していたはず」と指摘します。ポイントとなったのは、危機管理の責任者としてのリーダーシップの欠如でした。 「未曾有の大災害が起こったとき、その危機管理の司令塔であるべき総理大臣が、こんなにあちこち動き回るのはいただけません。官邸にはありとあらゆる情報が上がってくるのですから、その場を動かず、必要な決断を下すのが本来の役割でしょう。しかも、あのときは原発だけじゃなく、東日本全域にさまざまな被害が出ていた。そんなときに特定の事象にこだわって、現場に行ったりするべきではありません。しかも、その結果、東電や現場の吉田所長と対立までしてしまったのは、いかにもマズイでしょう」 こう分析した上で、鈴木氏は原発特有の事情にも留意すべきだとします。 「法律上、原発事故は事業者責任です。だから今回の責任も、政府ではなく、東電にあるという建前になっています。実際には、安全管理やエネルギー政策などの面で政府は常に干渉してきますが、いざ事故が起こっても彼らは指示するだけで、責任を持たないのです。この曖昧な構図は事故直後のやりとり、現在の復旧活動にも影響を与えています。菅氏もたしかにマズかったのですが、それ以上に、こうした仕組みをつくりあげた歴代の政権、つまり自民党にも大きな責任がある。それを忘れるべきではありません」 (岩田智也/清談社)