「吉田調書」など公開 菅直人元首相は福島原発事故で何を批判されているのか?
東日本大震災直後に発生した福島第一原発事故。発生から3年半が過ぎた今も、多くの方々がまだ避難を余儀なくされ、現地では収束に向けた努力が続けられています。私たちはこの事故から何を学んだのでしょう。どうしたらこのような事故を二度と起こさないようにできるのでしょうか。 【画像】<THE PAGE 生トーク>菅直人に生で聞く 吉田調書、メディア、原発
■菅氏の行動への批判と反論
9月11日、政府はその手がかりとなる資料を公開しました。政府の事故調査・検証委員会が関係者を個別にヒヤリングしたもので、最終報告書のもととなった個別資料です。従来非公開だったのですが、朝日新聞が今年5月20日朝刊一面で、福島第1原発所長だった故・吉田昌郎氏の聴取結果書、通称「吉田調書」を入手したとして「所長命令に違反 原発撤退」という見出しでスクープ。その真偽や解釈をめぐって激しい議論が沸き起こり、政府はこの「吉田調書」と事故当時の政府関係者18名の聴取結果書を公開する、という異例の対応をとったのです。これを受け朝日は9月11日に一部報道を修正、謝罪しています。 事故後、世論の批判を浴びた人物に、当時の首相・菅直人氏がいます。菅氏は「原子力緊急事態宣言」のもと設置された「原子力災害対策本部」の本部長でもありました。しかしその対応は一部関係者が高く評価する一方で、批判する意見が根強く、民主党政権の地盤沈下を招く一因にもなりました。2011年3月、福島第一原発で何が起こったのか。今後同様の事態が起きたとき、私たちはどうするべきなのか。吉田調書が公開された今、改めて考えるために、菅氏と福島原発事故、東電をめぐる一連の問題について、論点を整理してまとめてみました。
(1)原発事故現場への急な視察
菅元首相は震災の翌日3月12日朝午前7時過ぎに、福島第一原発をヘリで直接視察。その後も何度か直接電話をしました。吉田所長はこれについて違和感を表明しています。 「何で官邸なんだというのがまず最初です。何で官邸が直接こちらにくるんだ。本店の本部は何をしているんだ」(吉田調書) 政府事故調の最終報告書でもこのように指摘されました。 「介入は現場を混乱させ、重要判断の機会を失し、判断を誤る結果を生むことにつながりかねず、弊害の方が大きい」(政府事故調の最終報告書) また読売新聞は8月31日の社説で、「現場の状況を踏まえぬ菅氏らの過剰介入が、作業を遅らせ、士気を損なった。重い教訓である」と断じています。 (菅氏の反論=要旨) ・住民の避難を判断するのは原子力災害対策本部の役目。そのためにはベントがいつ行われ、どの程度の放射性物質が放出されるかを知ることが重要だった。 ・ 東電本店から官邸に来ていた担当者は「分からない」という。ベント作業をめぐる現場の状況についても伝わってこなかったので、手探りで避難範囲を決めていた。 ・住民避難の判断のため、現場の責任者と直接話す必要があった。