「聞いて、クソババアがね(笑)」と愛犬に愚痴ったことも…新田恵利 6年半の介護を経て、淑徳大学で教壇に立つ今
新田さん:一番いいのは、同じ介護仲間に話すことでしょうね。友達でもいいし、SNSのなかでもいい。私の場合は、たまたま同じころに幼馴染が介護仲間になったので、時間が空いたときにはふたりでランチをしていました。散々、愚痴を言い合った後は「よし!これでまた明日から親に優しくできるね!」と、お互いにスッキリした顔で「またね」とお別れして。適度に息抜きをしないと、気持ちがいき詰ってしまいますから。
■客員教授として今、伝えたい介護の経験 ── 自身の介護の経験を活かし、2023年からは淑徳大学で客員教授をされていらっしゃいます。講義では、どんなことを伝えているのですか? 新田さん:私の実体験を通じて、介護する家族がどんなことを考え、なにを感じて介護と向き合っているのかを伝えています。生徒さんたちは、授業の一環として介護の現場を見学することはありますが、核家族化が進んでいるいま、実際に自分が介護をする側になったり、家族のリアルな話を聞く機会はあまりないと思うんです。
若い子たちは頭が柔らかいから、本当に素直ですね。「介護は親子のコミュニケーションが大事だから、普段からたくさん話をして、親のことをよく知っておくといいですよ」と伝えると、「今日、お家に帰ったら、すぐ親に電話してみます」「もっと会話を増やします」と、素直な反応がかえってくるのが嬉しいですね。 ── 「親のことをよく知っておくことが大事」というのは、私も介護経験者としてすごく共感します。親の好きな食べ物、趣味や好きな歌など、意外と知らないものですよね。「親が何をすれば喜ぶのか、よくわからない」という声を聞くことも多いです。
新田さん:そうなんです。そんな人たちに私がおすすめしたいのは、「KAKO KAKOノートノート」です。 ── 「KAKO KAKOノート」? かわいらしいネーミングですが、何を記すのですか? 新田さん:エンディングノートと少し似ているのですが、中身が違います。エンディングノートは、自分が亡くなった後、残された人のために、大切な情報を主に書き記すものですよね。それに対し「かこかこノート」は、過去、つまり、親のこれまでの人生を知るためのものです。親がどんな人生をたどってきたかを、質問しながら親子で一緒に埋めていくんです。それ自体がコミュニケーションの時間にもなりますし、そこに記した情報が、普段の親子関係をよくするためのツールにもなったり、のちの介護にも役に立ったりします。