「聞いて、クソババアがね(笑)」と愛犬に愚痴ったことも…新田恵利 6年半の介護を経て、淑徳大学で教壇に立つ今
── なにかきっかけがあったのでしょうか? 新田さん:母が元気なころは、私とケンカをすると決まって家出をしていたんです。ただ、行くところは決まっていて、埼玉に住む親友のお家。「しばらく帰ってこないからね!」と啖呵をきって出ていくのですが、必ず1泊で帰ってくるので(笑)。母の親友の近所に住む姉に電話をして、「母がそっちにいったと思うからよろしく」と確認をしていました。 ですが、寝たきりで動けなくなってからは、ケンカをしても家を出ることができない。私と言い合いになった後、ベッドのなかで大粒の涙をこぼしながら歯を食いしばって、私と目を合わせないように横を向く母を見て「ああ、逃げ場がない母を追い詰めるなんて、なんてことをしたのだろう」と、胸が苦しくなったんです。そこからは、どんなに腹が立っても感情をぶつけることはしないようになりました。「あ、ケンカになりそうだな」と思ったら、母のそばをいったん離れて、2階のリビングに上がり、愛犬相手に「聞いて、クソババアがね」なんて愚痴っていましたね(笑)。
── 相談相手は、犬…? 新田さん:愛犬にもたくさん慰めてもらいましたが、だいたいは夫に愚痴ってましたね。ただ、最初のころは私の愚痴に対して、いちいち的確なアドバイスをしようとするので、余計にイラっとして「アドバイスなんて求めてない!ただただ聞いてほしいだけ」と伝えたら、わかってくれました。その後は、私が何を言っても否定せず「うんうん」と相づちを打ちながら聞いてくれ、「頑張ってる」と励ましてくれました。夫が寄り添ってくれたおかげで、すごく救われましたね。
介護中は、ネガティブなことを吐き出す場所を持っておくことがすごく大事です。家族や友達に話をしたり、日記に書いたり、なんでもいいと思います。高齢の親は感情が不安定になりがちですし、介護する側はそれに振り回されて疲弊してしまう。ですから、自分の感情を赤裸々に打ち明けられる人を見つけておくといいですよね。 ── 共感します。ただ、重たい話になりますし、経験者でないと、なかなかわかってもらえない感覚もあるので、相談相手は選ばないといけないですね。