完全な姿とどめたミイラ化恐竜化石を発見 ── カナダ・アルバータ州
ミイラ化した恐竜化石にみられるミステリー
全身がきれいにつながった骨格化石からは、胃などに位置するモノ(内容物)も合わせて保存されているかもしれない。こうしたデータから、当時の鎧竜の食生活の様子を探ることもできるはずだ。ちなみに(興味深いことに)胃や腸の周りとみられる部位から、丸みを帯びた石ころの存在が多数確認されているそうだ(こちらのサイトの写真参照)。こうした体内に飲み込んで蓄えられた石は、(現生の一部の鳥などに見られるように)食物を消化する際に用いられていた可能性が高い。もちろん完璧に保存されているアゴと歯の化石からも、多くの重要な食生活に関するデータが手に入ることだろう。 三次元的に保存されている立体的な化石骨格の中には、軟組織 ─ 例えば筋肉や消化器官等 ─ の跡が残っていないだろうか?「心臓の輪郭などでも残っていないだろうか」と、私は自分勝手に期待してしまう。しかしこれだけの大きさの化石骨格だと、病院のCTスキャンなどでは小さすぎて間に合わないだろう(注:化石の重量約1.5トン、長さ約5.5m)。何か最新のテクノロジーを用いて、貴重な化石を切り刻まずに岩石の中を調べるいい方法はないものだろうか。 きれいに保存されている鎧だが、表面に引っかき傷のような跡は残っていないだろうか? 肉食恐竜と格闘した際の名残がないか、(個人的に)気になるところだ。爪によるものだろうか、それとも歯によるものになるのだろうか? もしかして卵の化石か赤ちゃん恐竜の骨が、母体の中に残っていないだろうか?(注:オスの場合は当然こうした跡は見られないはずだ。)思いつくままにいろいろ書き連ねてみたが、この骨格化石には、非常にたくさんの恐竜の進化や生態におけるミステリーが隠されているのは間違いないだろう。 古代エジプト人は死体をミイラとして処理することで、その後数千年に渡って保存することに成功した。何かしら神秘的なパワーを得ようとしたのだろうか。不老不死の理念を実現しようと試みたのだろうか。しかし自然の力によっても、ミイラ及び死蝋(しろう)が形成される可能性があることは、今回の発見でも明らかだ。(注:その他にもいくつかミイラ化した恐竜化石の存在は知られている。)1億年以上も前に死んだ動物の死体が、現在、ミイラ化した化石として見つかる ── こうした事実を前にして、古代エジプト人ははたしてどのような反応を示すのだろうか? 追:今回この記事を書くに当たってカナダのアルバータ州にあるThe Royal Tyrrell Museumから、直接この化石標本のイメージ(写真)を使わせていただく許可を得ることができた。同博物館のスタッフの方にこの場をかりて深くお礼を述べさせて頂きたい。(Special thanks go to Dr. Caleb Brown and Ms. Carrie Lunde!)