歌旅 いしだあゆみ 「ブルー・ライト・ヨコハマ」の喚起力 中西康夫
横浜が恋人たちの聖地になったのは「ブルー・ライト・ヨコハマ」があったからこそではないだろうか。たんに、港町であり、マリンタワーがあり、ベイブリッジが見えるからではなく、この歌が人々の潜在意識に染み入り、恋人たちはヨコハマに向かうようになったのではないか。 30年後の1998年に大ヒットしたサザンオールスターズの「LOVE AFFAIR~秘密のデート」は不倫の渦中での愛の切なさを歌っているが、歌詞には「ブルーライトバーで泣き濡れて」の一節があり、サザンの曲の恋人たちも「ブルー・ライト・ヨコハマ」を胸に宿しているように聞こえる。 「ブルー・ライト・ヨコハマ」は最小限の言葉で、シンプルに、美しく、愛し合う二人の姿を描き出した。異文化が交わり、空と海の青さが際立つヨコハマで。人々はそこにそれぞれの夢と現実を託したのである。 揺れる女心を普遍的に表現し続けた、いしだあゆみの歌唱力に改めて感嘆する。 横浜の景色は年々変わっていくが、どんな時代にも愛と青春は必ずある。私も、秘めた恋の数々を走馬灯のように思い出そう。青い光は、私たちの未来も照らしてくれるはずだ。 <音楽プロデューサー 中西康夫> なかにし・やすお 1972年生まれ。音楽プロデューサー。演出助手、舞台監督として、「レ・ミゼラブル」などのミュージカルに数多く携わる。2004年から日音で新人アーティストのプロデュースやイベントなどを行っている 6月4日発売の「サンデー毎日6月16・23日合併号」には、他にも「寺島実郎『日本再生構想』の衝撃 在日米軍基地の段階的縮小を! 倉重篤郎」「東京都知事選 小池百合子 蓮舫が描く完全シナリオ 政策論争はどこへ、人気取り合戦の歴史 鈴木哲夫」「べストセラー『定年後』著者・楠木新 60~74歳は『黄金の15年』、75歳以降は『四つの寿命』コントロールがカギ」などの記事も掲載しています。