CRMで都度購入客の継続率を高める方法とは? 重要なのは「バックエンドデータ」の活用+RFM分析に継続率を加えたセグメント化
「アクティブ客」の識別が重要だが、難しい点も
下の図は、顧客実績データを活用したEC・通販のマーケティングアプローチのイメージです。
まずは「新規顧客の獲得」、そして「F2転換」、他は「休眠掘り起し」――。極端な見方ですが、多くの企業が注力している顧客へのアプローチはこのようなイメージではないでしょうか。 「新規顧客」「一度しか購入していない顧客」「ある一定期間購入してない顧客」というように、わかりやすい状態の顧客だけをターゲットにしていませんか? 売り上げの大半を占める「アクティブ客」へのフォローが、ほかの顧客と同じ内容の一斉メール送信になっていませんか? 一言で「アクティブ客」と言っても、「過去2回以上購入している」「一定期間継続している購入している」と状態はさまざま。優良客といわれるファン化した顧客もいれば、ある一定の間隔で購入する顧客などが含まれるため、この顧客を分けてアプローチすることは難しいのです。 ある企業に以前、「『アクティブ客』も自然減することはあるが、どのような対策をしているか」と聞いたところ、「減少した分、新客を獲得する」という答えが返ってきて驚いたことがあります。 優良客と新規顧客の購買力には雲泥の差があることを、その担当者も頭ではわかっているのかもしれませんが、「アクティブ客」の識別が難しいため、この回答につながったのでしょう。しかし、これではバックエンド側のデータを活用しきれていないことになります。
「都度購入客」を特定するには、RFM分析に「継続率」を加えてセグメント化
実績データなどを活用する際に利用している分析手法として、「RFM分析」があります。CRMで「RFM分析」を用いる際の注意点をお伝えします。
「RFM分析」は、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の3つの指標を用いて顧客の優劣を分けたグループを作成する分析方法です。 また、「CRM(Customer Relationship Management)」は顧客との信頼関係を構築することで、小売りでは主に一度の購入にとどまらず、リテンション&ファン化をめざすマーケティング手法を意味します。 CRMでは、複数いる顧客との接点とその親密度を分析することで顧客との関係性を高めていき、売り上げを伸ばすための戦略を立てていきます。CRM戦略を進める上で、「RFM分析」を利用して顧客のセグメントやアプローチ対象の顧客を抽出しているケースが多いと考えられますが、実はCRMに「RFM分析」は少し物足りないのです。 「RFM分析」は一番動きのある顧客を見つけるのには最適ですが、「継続状況」を確認するには大変手間がかかり、難しいという点があります。大きな理由は「継続率」が「R」「F」「M」の3指標だけでしか見れないことなんです。 「定期販売」では最初の注文の段階からどれくらいのサイクルで商品を届けるかが決まっています。その為、定期の顧客をセグメントするときには「RFM分析」がよく使われます。しかし、「都度販売」では購入が見込める顧客は既に「定期販売」を離れているため、購入サイクルが決まっておらず、どんな買い方をしているのか、それがどれだけ継続してきたかの要素を加えることが重要です。そのため、「RFM分析」だけで行うには注意が必要になってきます。 以下の例を見ると、どう見ても違う買い方の顧客でも同じグループに所属することになります。 (例)「R6F8」のセグメントグループ ・直近6か月以内に購入がある。かつ購入回数8回の顧客 ・登録直後に連続して7回購入、数年空いて最近購入した顧客 ・ほぼ3か月に1回の割合で購入している顧客 「RFM分析」でこの継続率を確認する場合は、Rにあたる「Recency」を細かく分けて継続状況を把握しながら顧客を選別・抽出するため、煩雑な作業が発生します。また、「最終購入日(R)」「回数(F)」「金額(M)」、これらの加点範囲や配点比重によって分析結果も変動するため、「RFM分析」で顧客の購買力を識別することはとても難しいのです。 しかしこれができると、定期顧客でなくても継続しているかどうかがわかり、購入タイミングへのアプローチがヒットすれば都度顧客への転換も見えてきます。 CRMは、購入ポイントと継続状況が近い顧客をセグメントしてアプローチすることで、今より高い継続率をめざす必要があります。「RFM分析」を利用する場合は、手間がかかっても顧客を細分化し、できるだけ「買い方」が同じ顧客=継続率が同じ顧客をセグメント化して合理的にアプローチすることが必要と言えます。