H3ロケット、低コスト化で国際競争力強化へ…三菱重工「一つひとつの成功が次の受注につながる」
日本の新型主力ロケット「H3」の4号機は4日午後、2、3号機に続く打ち上げに成功し、機体の信頼性をさらに高めることができた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は今後、よりコストダウンを図った機体の技術実証を本格化させ、国際競争力を強化する。 【写真】種子島宇宙センターから打ち上げられた「H3」4号機
同日、種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)で記者会見したJAXAの有田誠プロジェクトマネージャは「安定した運用の段階に持ってこられたと考えており、非常に大きな一歩だった」と手応えを語った。
人工衛星を使った宇宙ビジネスが広がる中、衛星の商業打ち上げの受注獲得競争は激化。現行の主力ロケット「H2A」は高い信頼性が売りだが、1回約100億円の打ち上げ価格がネックで受注競争は苦戦した。
H3を共同開発したJAXAと三菱重工業は、H3の価格目標をH2Aから半減させた約50億円に設定する。その成否の鍵を握るのが、ロケットの機体タイプの変更だ。これまで打ち上げに成功したH3は、いずれも主エンジン2基と補助ロケットブースター2本のタイプだった。
だが、主エンジン3基を束ねると、ブースターなしでも衛星を運用する軌道に届く。ブースターがない分、コストダウンを図れる。JAXAは2025年度中にブースターなしの機体を打ち上げ、技術実証を進める。
すでにアラブ首長国連邦(UAE)の探査機や欧州の衛星などの打ち上げ受注を獲得した三菱重工業の五十嵐巌・宇宙事業部長は、「一つひとつの打ち上げを成功させることが次の受注につながる」と話した。
きらめき3号、通信能力向上…防衛省の衛星
防衛省の通信衛星「きらめき3号」は、陸海空の各自衛隊間の指揮や作戦情報に関する重要な通信を担う。同省は全3基体制での運用を目指しており、今年度内を予定する3号の運用開始によって整備が完了する。
きらめき3号は、画像や映像など大容量のデータを安定的に送受信できる周波数帯域「Xバンド」を使う。自衛隊は元々、民間衛星を利用してXバンド通信を行っていたが、情報保全の問題や使える時間帯の制限があり、2017年から独自衛星の整備を進めてきた。
すでに運用中の1、2号に比べて3号は通信妨害を防ぐ機能が向上。打ち上げ費も含めた開発費は約700億円に上る。大規模災害や有事などの際、広範囲に展開する部隊と司令部間の通信能力が高まる見込みだ。記者会見した同省の加藤康博空将補は「日本の安全保障や自衛隊の運用能力の向上に寄与する」と話した。