日本シリーズ惨敗「ソフトバンク」に専門家は「小久保監督の慢心」を指摘…名将・野村克也氏が「短期決戦では常に自分たちが“格下”」と考えていた理由
野村監督と小久保監督の差
広澤氏にとって強く印象に残っているのは、野村氏の日本シリーズに挑む際の“姿勢”だという。広澤氏は95年に巨人に移籍したが、その年に行われたヤクルト対オリックス戦も含め、「野村さんは対西武でも対オリックスでも、自分たちヤクルトが“格下”だと認識していたはずです」と指摘する。 「文字通りの黄金時代だった西武は当然だとして、オリックスとの日本シリーズでも『イチローを何とかしないと負ける。イチローは一人でも流れを作ることができる選手だ』とずっと心配していました。本気で格下だと思っていますから、勝つためには手段を選びません。例えば野村さんの場合、試合前から日本シリーズは始まっています。記者に怪情報を披露したり、煙幕を張ったりして、全力で情報戦を仕掛けるわけです。格上のチームを率いる監督であれば問題視されるかもしれませんが、野村さんの判断では『自分たちは格下だ』ですから許されるということになります」 それではソフトバンクの小久保監督は、果たして自分たちが「格下」だと思っていただろうか? 「小久保監督は自分たちが戦力で上回っており、格下のDeNAに対しては横綱相撲で挑むべきと考えていたのではないでしょうか。まず攻撃の回では積極的に仕掛けなかったという印象が残りました。例えば足の速い周東佑京選手でかき回し、DeNAの投手陣にプレッシャーをかけるのかと予想していましたが、そういう場面は少なかった。投手の継投策でも後半はことごとく裏目に出ましたが、『いいピッチャーを惜しげもなく投入する』という必死の姿勢ではなかった気がします。つまり率直に言って、小久保監督は相手がDeNAということで、慢心や油断があったのだと思います」(同・広澤氏)
意味のない補強策
野村氏は南海(現ソフトバンク)時代、まず選手として日本シリーズに5回出場し、うち2回で日本一に輝いた。さらに監督としても5回出場し、うち3回で日本一の栄光を掴んでいる。 「野村さんは豊富な経験から、日本シリーズにおける1球の怖さを知り抜いていました。一方の小久保監督は1年目の新人監督です。DeNAとの日本シリーズでまさかの敗戦を経験し、初めて日本シリーズの恐ろしさを実感したのではないでしょうか。3位のチームが日本一に輝いたことで議論を巻き起こしましたが、DeNAの全力プレーに感動し、26年ぶりの日本一を喜んだ野球ファンも非常に多かったのは事実です。不思議に印象深い日本シリーズとなりました」(同・広澤氏) 小久保監督は日本シリーズの敗退が決まると、報道陣に「敗戦の責任は全部僕にある。選手はよくやってくれた」と語った。ひょっとすると小久保監督は選手を庇うために発言したのかもしれないが、文字通り、監督の采配が勝敗を大きく左右したのは間違いなさそうだ。 ちなみに敗戦後、ソフトバンクは後藤芳光球団オーナー代行兼社長が戦力をさらに補強する考えを示した。だが、なりふり構わず他球団から選手を引き抜く補強はXで野球ファンに不評を買っている。広澤氏も「たとえレギュラーシーズンで100勝しても日本シリーズで負けることはある」と指摘する。 デイリー新潮編集部
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