日本シリーズ惨敗「ソフトバンク」に専門家は「小久保監督の慢心」を指摘…名将・野村克也氏が「短期決戦では常に自分たちが“格下”」と考えていた理由
自滅したソフトバンク
少なからぬ野球解説者は「ソフトバンクの自滅」を指摘した。代表的なデータの一つが四死球の多さだ。全6戦でDeNAの投手陣が与えた四死球は16だったのに対し、ソフトバンクは28に達した。 「DeNAが敗れた初戦で、DeNAの投手陣は合計8つの四死球を与えました。一方のソフトバンク投手陣はたったの2つだったのです。ところがDeNAが勝ち始めると、四死球の数は綺麗に逆転していきます。第3戦はDeNAの投手陣が与えた四死球は2つだったのに対し、ソフトバンクの投手陣は8つ。ソフトバンクの投手陣は第5戦も8つ、第6戦も6つの四死球を与えました。強打を誇るDeNA打線に対し、いたずらに四死球でランナーを溜めてしまってはひとたまりもありません。ソフトバンクの典型的な自滅パターンだったことがよく分かります」(同・記者) ソフトバンクの投手陣が苦しんだ理由の一つとして、打撃の低迷も挙げられる。何しろ27イニングも無得点だったのだ。苦労しながらランナーを溜めても、凡打で0点に抑えられることが多かった。これで投手陣は「自分たちが守り切らなければチームは負ける」、「DeNAには1点もやれない」と緊張してしまい、いつものように思い切ったボールで勝負することができなかったようだ。
野村監督の至言
野球評論家の広澤克実氏は「レギュラーシーズンと日本シリーズは別物」と指摘する。広澤氏はヤクルト、巨人、阪神の3球団でプレー。ヤクルト時代には1992年と93年に西武と日本シリーズを戦った。共に4勝3敗までもつれ込み、現在でも「史上最高の日本シリーズ」との呼び声が高い。92年は敗れたが、93年は日本一に輝いた。 阪神時代は2003年にダイエー(現:ソフトバンク)と日本シリーズを戦った。こちらも第7戦までもつれ込み、結果は4勝3敗でダイエーが勝利した。 広澤氏は自身が日本シリーズに出場しただけでなく、ヤクルト時代の監督が“名将”と呼ばれた野村克也氏であり、その発言を直に聞いていた。こうした経験から「日本シリーズは普段の試合とは異なり、チームの戦力がそのまま勝敗に反映されるとは限りません」と指摘する。 「野村さんは『短期決戦の勝敗はチームの打力、守備力、走力といった総合的な戦力ではなく、運や流れで決まることのほうが多い』と何度も口にしていました。大舞台で相手チームがミスをしてくれれば、一気に流れがこちらに傾きます。しかしながら、相手もそう簡単にはミスしません。流れを自分たちで引き寄せる必要がありますが、そのためにはどうしたらいいのか。野村さんは『相手打者にボール球を振らせること』と断言していました。確かに今回の日本シリーズでも、DeNAの投手陣は要所要所でソフトバンクの打者にボール球で振らせたり、凡打に打ち取ったりしていました。野村さんの指摘通り、あれで流れがDeNAに傾いたのです」