今年前半は“震度5弱以上”が多発 「巨大地震の前触れ」は本当か? 日本に地震安全地帯がない理由 #災害に備える
日本に地震安全地帯はない
「能登半島や千葉の地震は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震と直接的には関係がない」というのが地震学の一般的な見方だ。また、今年5月に地震が多かったのも、「偶然」といえるだろう。 日本周辺では、海の「太平洋プレート」や「フィリピン海プレート」が、陸のプレート(北米プレートやユーラシアプレート)の方へ年数センチの速度で動いており、陸のプレートの下に沈み込んでいる。複数のプレートによって、日本列島には複雑な力がかかっているため、そもそも世界でも有数の地震多発地帯となっている。このため、同じ時期に地震が多くなることは決して不思議なことではない。 なお、近い将来の発生が危惧されている「南海トラフ巨大地震」は、2011年3月の「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」、100年前の「大正関東地震(関東大震災)」などと同様に、こうしたプレートがひしめき合う境界で発生する「海溝型地震」だ。太平洋側で発生する海溝型地震は、地震の規模が大きくなるため、強い揺れに見舞われる範囲が広くなる。巨大な津波を伴うことにも警戒が必要だ。 ただ、津波を伴う地震は日本海側でも発生することには注意を要する。北海道から北陸にかけた日本海東縁部にはひずみが集中している海域があり、1983年の日本海中部地震や1993年の北海道南西沖地震など、甚大な津波被害が出た地震が起きている。日本海側だから津波は関係ないなどと考えるのは大きな間違いだ。 また、プレートがひしめき合っていることによって、その境界だけでなく、プレートの内部でも地震が発生する。プレートの内部には、過去の地震によってずれ動いた場所が古傷のように残っている。プレートに力が加わり続け、耐えきれなくなると、この古傷が再びずれ動く。この古傷が活断層で、陸域の活断層がずれ動いて起きるのが「内陸型地震」。「阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)」や「熊本地震」はこのタイプだった。地震の規模は海溝型地震に比べると一回り小さく、一度発生してから次に発生するまでの間隔も時に数千年単位と長いが、ひとたび発生すると、人々が生活する場所の直下で起きるため、激烈な揺れに見舞われて大きな被害となりやすい。また、活断層は日本沿岸の海底にも多く存在する。それらがずれ動いた地震の場合は津波を伴うこともある。 国土地理院によると、日本では2000以上の活断層が見つかっている。さらに地表に現れていない古傷も多く存在していると考えられている。これらの古傷がいつずれ動くのかはよくわかっていない。ただ、西南日本では、南海トラフ巨大地震の前後に活断層による内陸型地震が多くなるという見方もある。 いずれにせよ、日本に地震安全地帯はない。日本中どこでも被害を伴うような大きな地震が突然発生する可能性があることを肝に銘じ、備えを進めたい。 (文・飯田和樹) ーーー 地震や台風、豪雨、火山の噴火などの自然災害は「いつ」「どこで」発生するかわかりません。Yahoo!ニュースでは、オリジナルコンテンツを通して、災害への理解を深め、安全確保のための知識や、備えておくための情報をお届けします。