今年前半は“震度5弱以上”が多発 「巨大地震の前触れ」は本当か? 日本に地震安全地帯がない理由 #災害に備える
石川県能登地方の地震
次に、今年5月に発生した地震の中でも、最も揺れが強かった能登半島の地震について考えてみたい。石川県能登地方では、2018年ごろから人が揺れを感じない規模のものを含め地震の回数が増加傾向にあり、2020年末ごろからその発生頻度が高まっていた。さらに2021年半ばごろからは、人が揺れを感じるような地震も目立つようになっていた。2022年6月には震度6弱、震度5強の地震が相次いで起きており、こうした一連の地震活動の中で、今回の大きな地震が発生したものだ。 政府の地震調査委員会などは、こうした地震活動について「能登半島の地下深くにある流体の移動に伴って起きている可能性がある」との見解を示している。気象庁の下山利浩地震情報企画官は「このような地震活動がいつまで続くのかはよくわからない状況。地震活動の領域も変化しており、今年5月の地震後は海域にも広がっている。もし、海域で大きな地震があった場合は津波が発生するおそれもある」と警戒を呼びかけている。
もともと地震が多い関東地方
また、今年5月のように、千葉県など関東地方で大きめの地震が発生するたびに、想定されている「首都直下地震」を頭に思い浮かべる人も少なくないだろう。しかし、関東地方はもともと地震活動が活発な地域であることを知っておく必要があるだろう。 関東地方の地震活動が活発なのは、陸のプレートの下に南側から「フィリピン海プレート」が沈み込み、さらにその下には東側から「太平洋プレート」が沈み込むという非常に複雑な地下構造となっているためだ。さらに、東日本大震災を引き起こした2011年3月の東北地方太平洋沖地震以降は、地震活動がそれ以前と比べて活発になったエリアも多い。 今から100年前の1923年9月の関東大震災を引き起こした大正関東地震は、陸のプレートにフィリピン海プレートが沈み込む相模トラフに蓄積されたひずみを解放するM7.9の大地震だった。過去の地震発生間隔から、大正関東地震と同様の相模トラフを震源とするM8クラスの大地震がすぐに発生するとは考えられていないものの、それよりも小さいM7クラスの地震はいつ発生してもおかしくないとされている。1995年の阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震や熊本地震(いずれもM7.3)のように、M7クラスの地震が人が生活している場所の直下で起きると最大級の揺れである震度7に襲われるおそれがある。 関東地方で大きめの地震があった場合は、「首都直下地震ではなくてよかった」とただ安心するのではなく、首都直下地震に対する備えを見直す機会としたい。