数十秒で海馬の形や容積がわかる/医療ジャーナリスト・安達純子
「新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防」<10> 認知症のひとつアルツハイマー病では、今世紀に入り、MRI(核磁気共鳴画像法)の検査ソフトが普及し、比較的簡便に脳の状態を画像検査で把握することが可能になった。アルツハイマー病で萎縮しやすい脳の海馬や、その周辺にある海馬傍回(ぼうかい)などの萎縮度が検査結果でわかる。この検査で萎縮が進んでいると判定された場合は、詳しい認知症検査を医師が勧めている。 「この従来法のMRI画像のソフトウエアは、患者さんの脳のMRI画像を撮影する医療機器や角度による誤差が生じていました。また結果が出るまで、20~30分ほど時間もかかるため、より正確に短時間で測定するソフトが求められていました」 こう話すのは順天堂大学保健医療学診療放射線学科の後藤政実先任准教授。2006年に従来のMRI画像による脳の萎縮度検査ソフトの評価研究を行った。その欠点を補うべく、富士フイルム開発の新たな「脳容積解析ソフト」の研究に参加。今年7月、AIを用いた脳容積解析ソフトの開発に成功した論文が、国際科学誌に公開された。 「新しいソフトが実用化されると、すでに医療機関に導入されたMRI検査機器を使って、患者さんの脳を撮影した後、数十秒で海馬の形や容積がわかります。より簡便に検査を行いやすくなることが期待できます」(後藤先任准教授) 海馬の萎縮度が正確にわかるようになると、診断に加えて治療の効果判定が行いやすくなる。新薬登場で進展が進む認知症の医療は、検査方法も躍進している。