百貨店大閉店時代でも盛況~「東京にある地方百貨店」
「松屋」は東京にある“地方百貨店”!?地域に根差した独自戦略とは
今年1月3日、東京・銀座の百貨店、松屋銀座には開店2時間前に500人以上の行列ができていた。先頭は朝7時から並んでいる母娘で「目当ては食品のガチャ」と言う。 【動画】百貨店冬の時代に業績好調!老舗百貨店のサバイバル術 食品売り場で行われたその「福ガチャ」。3000円でコイン1枚を購入し、それをガチャに入れてハンドルを回すとカプセルが。中には「ローマイヤ」の「ハム・ソーセージ詰め合わせ」(約5400円相当)や、肉の名店「日本橋日山」の「国内産黒毛和牛すき焼用」(約4500円相当)の引き換え券が入っている。
先頭に並んでいた母娘が当たった「バラエティ福袋」には高級冷凍食品ブランドのシーフードグラタンやロールキャベツの詰め合わせセット(約6300円相当)が。「福ガチャ」は先着100人、5分で完売した。 今、松屋はこうした楽しい企画を次々と打ち出し多くの客を集めている。創業は1869年。銀座と浅草の2店舗しかないが、独自の戦略で生き延びてきた老舗だ。 バブル崩壊以降、百貨店人気は下がり続け、2023年9月にはセブン&アイが「そごう・西武」をアメリカの投資会社に売却。全国的に見ても、百貨店業界全体の売り上げはピーク時の半分近くまで落ち、今やイオングループ1社に全く歯がたたない状況だ。 そんな中、松屋は去年上半期に銀座店で過去最高売り上げを達成。年間を通してもコロナ前を追い抜いた。
松屋といえば、外壁すべてを使った広告が有名だ。シャネルをはじめとする世界的な高級ブランドを中心に、お洒落でハイセンスなビジュアルは銀座の名物となっている。 「銀座でこれだけの広い壁面を持っている建物は他にはない。それが我々の強みですし、広告としても使っている」と言うのは社長・古屋毅彦(50)だ。 創業家の5代目でもある古屋は、2023年3月社長に就任。厳しい百貨店業界の中で、松屋はライバルの大手とは違う店だという。「松屋は東京にある地方百貨店」と言うのだ。 「全国各地にたくさん店舗を置かずに銀座と浅草を中心にして、他の百貨店がやらないことに積極的に取り組んで差別化していかないと、松屋が存在している意義がない」(古屋)