オワコンESG投資が「案外しぶとく生き残るかも」…なぜトランプ政権下「再び盛り上がる」のか
一方で「サステナブル運用の資産配分は今後増える」というデータもある
しかし、明らかに違う方向性を示すデータもある。 モルガン・スタンレーサステナブル投資研究所が世界901社の機関投資家を対象に調べたところ、「今後2年間にサステナブル運用の資産配分が増える」と予想する声は、資産運用会社などのアセットマネジャーが78%、年金などの同オーナーでは80%に達した。 投資の重要課題として「循環経済」や「気候変動対策」「地域の発展」などが列挙されていることから、ここで言う「サステナブル」は「ESG」とほぼ同義と考えられる。すなわち、少なくともトランプ時代の最初の2年、ESGは消えるどころか、ますます盛んになると見る向きが大半なのだ。
多くの投資家は「環境」や「社会」の視点を組み込んでいる
一つの仮説は、ESG/サステナビリティの諸問題が企業業績に強く影響するという認識が広がっている、ということだ。トランプ時代にエリサ法が改正され「投資判断の根拠を金銭的な利益だけに限る」といった内容になったとしても、多くの投資家はすでに「金銭的な利益」の予想に「環境」や「社会」の視点を組み込んでいる。 米資産運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)は10月末のリポートで「財務的に重大なESGファクターの考慮は、近い将来なくなることはないだろう」との見解を表明。トランプ氏の目を気にしてESGへの言及を控える米国勢のなかでは、きっぱりとした姿勢をとった。「例えば、サプライチェーン(供給網)で強制労働をさせている企業は、米国の輸入禁止措置を受ける可能性がある」。ESG要因と金銭的な利益は不可分とみているのだ。
米資産運用会社も「低炭素経済への移行」に言及
世界経済フォーラム(WEF)が11日に発表した「気候変動リスクは2035年までの企業収益を年間7%減少」とする報告も、ABのような投資家の意思決定を後押しするエビデンスとなる。 予想に反してトランプ時代にESG/サステナビリティーが盛り上がると考えられるもう一つの仮説は、投資家が面従腹背の戦術をとっているというものだ。 政治問題化を嫌っていち早く経営トップが「ESGという言葉は使わない」と宣言した米ブラックロックは、9月末のリポートで長期の市場トレンドを展望するにあたっての「5つのメガフォース」として「人口動態」や「人工知能(AI)」などとともに「低炭素経済への移行」に言及。「エネルギーシステムの再構築に伴い膨大な再資産配分が促される」と述べている。実際、ブラックロックは代替エネルギーやインフラ整備に積極的に資金を投じる意向を示唆している。