「補聴器」は慣れるまでの期間が必要なのはなぜ? 満足度調査から判明した”調整”の重要性
購入前のお試し「レンタル」がおすすめ
当店にご相談に来ていただいたお客様には、補聴器に慣れていただくために、まず購入する前に「お試し」をご提案しています。なぜかというと、日常生活の中で補聴器を実際に使っていただいて、補聴器が日常生活で役に立つかを判断してから購入を決めていただきたいからです。 どんな商品だって試して納得してから買うほうが失敗するリスクを減らせるもの。補聴器を購入するなら、お試し期間(レンタル)を設けている販売店を選び、何週間か試して調整して、それでも合わなかったら別の機種に変更するか、もしくは購入しなくても大丈夫。試してみて生活が改善するようであれば、購入を検討するステップに進めばいいのです。
補聴器の「調整」って何をするの?
実際に、どんな調整をするかというと、その人に合わせて、聞こえない低音や高音をたくさん大きくし、聞こえる音域は少しだけ大きくするといった「チューニング」をします。 さらに、小さい音はたくさん大きく、大きい音はそれほど大きくしない、など、音のボリュームの幅もその人が無理なく聞こえる幅に合わせて、チューニングしていきます。 聞こえにくくなると、大きい音も聞こえなくなると思われがちですが、実は、大きい音は変わらず大きく聞こえるので、健聴者と同じようにうるさく感じます。 一方、小さい音は聞き取れなくなっているため、「聞こえる幅」が狭まってしまうのです。このような理由から、使う人ひとり一人の聞こえの状態に合わせて細かく調整しカスタマイズすることが必要になります。 このカスタマイズがうまくいかないと、必要な音が届かず、せっかく補聴器をつけても「聞こえていない」状態になってしまいます。 そして、購入時にしっかり調整をしても、その後の聴力が変化した場合は改めて調整が必要になります。一度購入した補聴器は自分の聴力に合わせて、調整しながら快適な状態で使い続けていくというわけです。
音を聞くことと、言葉を聞き取ることは違う
調整において特に注意したいのは、「音が聞こえること」と「言葉を聞き取れること」は別の能力であるということ。 基本的に、言葉を聞き取る力の指標となる「語音明瞭度」が低下すると、耳から入る「音を言葉に変換する力」が弱くなるといわれています。この場合、補聴器を調整したとしても、聴力に問題がなかった頃と同じ語音明瞭度にはなりません。補聴器は、その人が持っている最高の語音明瞭度を、60dBという「普通の声の音量」で達成する、というのがゴールになります。 こうした事情をしっかりと説明されないままに補聴器を購入すると、「期待したほど聞こえなかった」ということになりかねません。 語音明瞭度が高ければ、”ピーピー、プープー”という「音を聞きとる」聴力測定の結果が悪くても、補聴器を着ければ改善する可能性も高いです。 逆に、語音明瞭度が低ければ、補聴器を着ける目標を、会話するよりも、危険な音を察知する、後ろから来る車の音が分かるようにする、などに重点を置くということも大事です。 こういった説明は、専門家(認定補聴器技能者)がしっかり行ってくれるので、補聴器を買う前に確認し、補聴器の目標をどこに置くのかを本人・家族と認識を一緒にしたうえで、購入するのが良いと思います。 「習うよりも慣れよ」。補聴器を使いこなすにはこのことが大切なのです。 最後に、慣れるまでのステップを経て、旅行が楽しめたという女性のお客様の実例をご紹介します。