「せっかくの優秀な人材があんな形で足を引っ張られるなんて…」《選挙の神様》藤川晋之助から見た「齋藤知事と立花孝志」
兵庫県知事選での後悔
「せっかくの優秀な人材があんな承認欲求が強い女性に足を引っ張られるなんて。私が広報戦略をやってあげればよかったと思ったくらいです」 【写真】再選後初のロングインタビューに答える齋藤知事 かつて自民党の金丸信元副総裁ら政界の大物が事務所を構えた「パレ・ロワイヤル永田町」の一室。ソファに深く腰かけた「選挙の神様」藤川晋之助氏(71)は、後悔と呆れが混じった口調でこう漏らした。 兵庫県の齋藤元彦知事(47)の公職選挙法違反疑惑をめぐる問題はいまだ収束の気配がない。事の発端は、PR会社「merchu(メルチュ)」代表の折田楓氏(33)が自らnoteで、先の出直し選挙において齋藤陣営のSNS戦略や広報全般を担当したと明かしたことだ。 齋藤氏側はmerchuに71万5000円を支払ったが、SNS戦略や広報は依頼していないと主張。折田氏が街頭演説の撮影などを行っていたことについてもボランティア活動だったと主張した。 これを受け、元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大学の上脇博之教授は、齋藤氏が71万5000円を支払ったことは買収、それを受け取った折田氏は被買収にあたるとして、神戸地検と兵庫県警に告発状を送付した。 すると今度は、『NHKから国民を守る党』の立花孝志氏(57)が、虚偽の訴えをした疑いがあるとして郷原氏を刑事告発。再選から約1ヵ月が経ったいまも混乱は続いている。 「我々選挙プランナーは、選挙後に『私が全部やりました』なんて絶対に言いません。たとえ持ち上げられても『協力してくださった皆さんのおかげです』と言うものです。折田さんは企業のPRには慣れているかもしれませんが、選挙は素人同然。公職選挙法というものをよく知らずに盛って書いてしまったのでしょう」
齋藤知事から「助けてください」
これまで関わった選挙戦は130勝16敗。「選挙の神様」と称される藤川氏は、齋藤知事から「助けてください」と懇願されていた。 「最初に接触があったのは、齋藤さんが初めて街頭に立つ前でした。友人である立命館大学の教授から『齋藤さんが困っているので助けてあげてほしい。電話させるから話を聞いてあげて』という相談がありました。 すぐに齋藤さん本人から電話がかかってきましたが、『これからひとりぼっちで街頭に立ちます。応援してくれませんか』と話す声は弱々しく、大丈夫かなと思いました。『スタッフはどれくらいですか』と聞くと、『まだ数人です』とやはりか細い声で答える。『しっかりしてください。あなたは全然悪くない』と元気づけました」 藤川氏はもともと天下り見直しなどに取り組んだ齋藤知事の政治手腕を高く評価していたという。 「兵庫県は天下り制度を含めて役人天国。20年続いた井戸(敏三)県政によって悪しき体質が蔓延っている中、齋藤さんは改革に着手した。齋藤さんは無表情で朴訥としており、誤解を受けやすいが、誠実な男です。ただ、既得権益者から見れば許しがたき男でしょう。『大丈夫かな』と心配しながら見守っていましたが、案の定潰されてしまった。 個人的には応援したい気持ちもありましたが、日本維新の会を離党して無所属で県知事選に出馬した清水貴之元参院議員は友人であり、齋藤さんの支援要請に応じることはできなかった。私はもともと東京維新の会の事務局長を務めていました。現在の維新について思うところはありますが、不義理はできません。『応援しています。がんばってください』と激励して電話を切りました」