佐世保市・宇久島「日本最大のメガソーラー事業」を巡って大モメ…断固反対する「漁協のドン」の正体
頑固反対の「漁協のドン」
だが、本格着工には至らなかった。20年に入ると新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令されるなど、中断せざるを得ない事態となったのは確かである。だが、それだけで5年の遅れは説明できない。 宇久島は全島が佐世保市に属するが、市議会関係者がこう説明する。 「宇久島で発電した電力は、海底ケーブルを敷設して佐世保市内に持ってこなくてはならない。それには漁組の承認が必要ですが、対象となる漁組が絶対に認めないのです」 既に、20年5月19日、県北地区の10漁組が記者会見を開き「(電流による)水温上昇などで漁業環境が悪化する可能性がある」と懸念を表明した。県北漁協の片岡一雄会長(佐世保市漁組組合長)は、「自然を守るために絶対反対だと言ってきたが、(計画を)強引に進めている。おカネ(補償)では動かない」と述べた。 この片岡氏がネックだというのは佐世保の行政や政界関係者が口を揃える。 「片岡さんは元代議士秘書で相当な政治力を持っており、各組合長さんが言うことを聞く。実は宇久島には10万キロワットの風力発電所計画もあって、こちらのケーブル敷設は承認している。片岡さんがダブルスタンダードなのは、フォトボルト時代の工作が露骨で、それにハラを立てた片岡さんが、頑として認めないため」(市役所関係者)
「限界島」にもたらすメリット
おカネでは動かない、というのはそういう意味らしい。ただ片岡氏はこの問題に関して、会見以外は口を開いたことがない。今回も筆者の連絡に「不在」を貫いた。 メガソーラー事業には、漁組以外にも地元軽視で計画を進めていることや、もたらされるメリットが少ないことを理由に反対運動を展開する住民がいるし、環境破壊を理由に声を上げている環境団体もある。 一方で宇久島の人口減少は深刻だ。60年の人口ピーク時、島には地域ごとに大小5つの小学校があり、トータルで2000人を超える小学生がいた。今は宇久小学校一校に統合され、生徒数は23人だ。人口は1800人弱、畜産と一本釣り漁業が基幹産業で従事者は200人ほど。島の平均年齢は63歳と限界集落ならぬ限界島だ。 メガソーラー用地の土地を貸すことによる賃貸収入、パネルなどのメンテナンス要員としての雇用、畜産業への牧草の購入支援、漁業への燃料費補助や警戒船の発注など、島にもたらされるメリットを上げて賛成の意向を示す住民もいる。 日本一のメガソーラーは、その規模に相応しいさまざまな課題を抱え、ようやくスタートしたが、まだ完全に解決したわけでもない。そのあたりを事業者側はどう考えるか。九電工の木下大執行役員に聞いた。