「旬が終わったら捨てられる」と思っていたーー上京から6年、あいみょんの変化
「インタビュー」の〈あいつら全員もう大嫌いだけど 事実上の負け感じた時だって ちゃんと笑えていたのが自分です〉という歌詞からは、現在の心境が伝わってくる。 「このまえ実家に帰った時に、お母さんと弟と3人で、YouTubeのコメント欄に書いてある悪口を一緒に読み上げて、大爆笑したんですよ。『こんなこと書かれてるって、すごない?』って。それで気持ち的に楽になった感じはありましたね。あとは、目の前にあるリアクションがすべてやと思えば楽ですよね。ワンマンライブをして、ここにいる何千人は自分の味方やと思えば、SNSは幻やったんかなくらいに思える。ライブができなくて、そういう書き込みだけがあったら、それこそやめてまうかなとか思ってたと思います」
嫌だったライブが必要不可欠に
コロナ禍のライブで、苦い思い出がある。2020年7月、当初は4月に行われる予定だった日比谷野外大音楽堂での弾き語りが延期になって、無観客の生配信で行われたライブ。この日のステージでは「これが最初で最後の無観客ライブにしたいと心から思います」「次は必ずみんなと会場で会いたいです」と画面越しに語りかけた。 「あの映像は未だに見られないです。すっごい嫌な顔してますもん。『会場にお客さんがいると思って』みたいな感じでしたけど、『いや、おらんから。いない人のことを想像するなんて無理』って、マイナス思考になっちゃってて。だからこそ、やっぱりライブは尊いというか、ライブに来てくれるってすごいことやなと改めて思ったんです」
ライブへの意識はこの10年で大きく変化した。今年は全国14都市を回るツアーを開催し、バンドの中でアコギをかき鳴らしながら歌い、広いステージを全力で駆け回っている。 「ライブは昔は超嫌でした。聴いてない人に目がいくんですよ。昔、私のライブに全然興味ない感じで、リップクリーム塗ってる子を見つけた時はマジで悔しかったですね。引き込めなかった自分がアーティストとして全然駄目やったんですけど、やっぱり悔しかった」 ライブを重ねるに連れて、意識は徐々に変わっていった。現在のライブで印象的なのは、ファンとの距離の近さ。「家族で来た人おる?」「どこから来たん?」と頻繁に話しかける姿は、友達のような親密さを感じさせる。今年のツアーでは客席一人ひとりの表情やリアクションを見るために特別な双眼鏡も用意した。ファンとコミュニケーションを取ることができる生のライブは、必要不可欠になっている。