「旬が終わったら捨てられる」と思っていたーー上京から6年、あいみょんの変化
「ハルノヒ」(2019年)は〈いつかはひとり いつかはふたり 大切を増やしていこう〉と、家族の幸せを歌った楽曲。そんな将来像に憧れを抱く一方で、音楽への想いが膨らみ続けているようだ。 「結婚式に集中してたはずやのに、その時も『音楽が、音楽が』っていうのが頭に浮かんでて、私音楽に呪われてるんかなってくらい、ずっと音楽が頭の片隅にいるんですよ。自分が選んだ道なので、そう簡単には捨てられない。もちろん、結婚しても音楽はできますけど、今はまだ何をするにしても『音楽が』っていうのがまとわりついてます」 家族への想いを胸に、今も東京で音楽を作る。 「実家に帰った時に、『違う匂いがする』って言われるんですよ。柔軟剤の匂いとかかなって思うんですけど、実家には実家の匂いがありますよね。そういう時、私には私の、一人で生活してる、自立してる人間の匂いがあるんやなって思います」
誹謗中傷はとにかく傷つく
フォークや歌謡曲の影響が色濃い曲調に加え、独自の歌詞表現によって、幅広い世代から支持を集めてきた。YouTubeで話題を呼んだインディーズ時代の楽曲「貴方解剖純愛歌~死ね~」や、自殺をテーマにしたメジャーデビュー曲「生きていたんだよな」の印象から、一時期は「死生観を描くシンガー・ソングライター」というイメージもあったが、近年そういった題材の曲はほぼ見られない。 「〈死ね〉みたいな言葉を使わなくなったのは、大人になって、もっと皮肉った言い方ができるようになっただけやと思います。よく言われるんですよ、『〈死ね〉とか言ってる時のほうがよかったのに』って。でもインパクトのある言葉は一回きりがいいと思う。〈死ね〉というワードが入った曲はもう要らない。中学2年から曲を書き始めて、自分の書きたいものを自由に書くスタンスはずっと変わらないです。それに加えて、この10年の経験が歌詞に反映されるようになったと思います」
〈馬鹿にされてきた自覚があるから そんなことではへこたれない〉。最新アルバム『瞳へ落ちるよレコード』に収録されている「インタビュー」という曲の歌詞は、自分のことが書かれたネットニュースを見て、突発的に書いた。 「デビューしたての頃は自分の名前を検索しても何も出てこなかったですけど、最近はマイナスな言葉もプラスな言葉もいろいろ出てくるようになって。『悪口が多いほうが人気のバロメーター』と言われて、『そうやな』と言い聞かせつつも、やっぱり傷つきます。とにかく傷つく。また家族の話になっちゃうんですけど、私に対する誹謗中傷で家族が傷つくかもしれないと思うと、それはきついですね」