辰吉Jrの2度目“聖地”登場は不完全燃焼の2回負傷ドロー…父は「モノは考えよう。対左の経験積んだと思えばええ」と慰める
新型コロナ禍で、ただでさえ相手探しが難しいうえに、関西には辰吉の体重の前後でサウスポーのプロボクサーが少ない。スパーリングもひと苦労だが、アマチュアのサウスポーに声をかけて、約60ラウンドのサウスポー対策を徹底してきた。 「練習できない自粛期間は(気持ちの面など)難しかった。でも試合が決まってからは万全に取り組めていた」 その成果の一端は、第1ラウンドに出た。 辰吉は、長身のサウスポーの今村に強引に前に出て右から左フックをお見舞いした。ステップワークと体の上下の動きを使いながら、歩くようにして左右のフックを振り回してプレッシャーもかけた。 距離をつめて左アッパーも器用に使い、ボディに細かいパンチを連打してから、上への攻撃につなげるテクニックも披露。このラウンドの終盤には、遠い距離からの右のボディストレートを正面から2発打ち込むなど、辰吉のサウスポー対策は、実を結んでいるようにも見えた。今村はスピードもなく、辰吉はパンチを見切ってもいた。 しかし、プロ戦績は2戦2勝(1KO)だが、名門、日大出身でアマキャリアが52戦もある今村は、徐々にプレッシャーをかけてきた。2ラウンドの残り40秒で、辰吉はノーモーションの左ストレートを正面からまともにもらい、一瞬、腰が落ちたのだ。ロープに下がり、もう一発左を打たれて動きが止まるシーンもあった。 吉井会長は試合内容を評価した。 「2回の終わりにストレートをもらったけど効いてはいないし、そこから組み立て直していくところだった。不完全燃焼ですね。でも初めてのサウスポーに対し、思っていたよりいい動きを見せていた。それだけに(負傷で打ち切られ)残念だが、仕方ない」 リングサイドでは、父と兄の寿希也さん、妻の優さんが3人で観戦していた。新型コロナ対策で、観客数は400人に制限され、家族の観戦も3人までとされていたこともあり、母のるみさんと、寿以輝の3歳になる娘の莉羽ちゃんは、近くのホテルに待機してのテレビ観戦だったという。 父は、「アクシンデントやからな。ようわからんわ」と、苦笑い浮かべた。 「欲を言えば左(のリードブロー)が少ない」 さらに「実際に動きを見せなわからんやろうけど」と身振り手振りを交えてサウスポーに対する構えの問題点も指摘した。もっと半身になり、相手の右足より左足を左へ、左へとポジショニングをしながら動くことが重要だったと説明した。