音楽好きが集う「夢のホテル」 グルメも観光も味わい尽くす【シカゴ音楽旅行記Vol.4】
音楽好きが集う「夢のホテル」
旅行の成否はホテルで決まるといっても過言ではない。その点、今回宿泊したVirgin Hotels Chicagoは文句なしのパーフェクトだった。マイク・オールドフィールドやセックス・ピストルズらを輩出したレコード会社を足がかりに、航空・旅行・金融などを扱う世界的複合企業となったヴァージン・グループの「らしさ」が詰まっており、音楽好きに刺さりそうなポイントがいくつもある。 まずは、ループエリアのほぼ中心という理想的なロケーション。グラント・パーク及びミレニアム・パーク(本連載Vol.3参照)をはじめ、上述したグルメ/観光スポットの大半が徒歩圏内なのだ。ロラパルーザの会場やシカゴ美術館、シカゴ劇場も歩いてすぐだし、シカゴ川沿いの遊歩道に足をのばせばクルーズツアーやリバーウォークも満喫できる。 さらに朗報。シカゴが舞台の映画『ハイ・フィデリティ』を想起させる、雑多で音楽愛に溢れたレコードショップ「Reckless Records」が徒歩7分の距離にあるのも嬉しい。品揃えもセンス抜群だ。 ダウンタウンの好立地に構えるだけあり、26階・屋上ラウンジ「Cerise」ではDJのプレイやカクテルとともに、息を呑むような絶景を楽しむことができる。ここでは多種多様なイベントが日々開催されており、昨年のロラパルーザ開催期間中には米ローリングストーン誌とNYのパーティーSoul in The Hornのコラボ企画も実現。音楽業界からの注目度も高い。 一つ下の25階は「Upstairs」という、禁酒法時代のもぐり酒場をイメージした隠れ家的スペース。パール・ジャムのエディ・ヴェダー、チャンス・ザ・ラッパーといった大物たちも訪れるなど、リリースパーティーやプライベートイベントにも使われている。Virgin Hotels Chicagoは地元アーティストのフックアップにも力を入れており、筆者が土曜のフェス帰りに参加したイベント「Underground Village」でも若いDJが奮起していた。 独自の美意識とセンスは、客室の隅々にまで反映されている。ベッドは特許取得済みで、人間工学に基づいたヘッドボードはソファとしても重宝する。ヴァージンのブランドカラー、赤を特注したSMEG製の冷蔵庫を全250室に設置。ホテルの携帯アプリ「Lucy」を使えば温度や明るさの調整、24時間対応ルームサービスの注文、ディナーの予約などが一台で操作でき、ルームキーにも早変わり。 Virgin Hotels Chicagoは「食」も充実。唇とネクタイをシンボルとするMiss Ricky’sは宿泊客以外にも好評だ。シチリア島で腕を磨いたシリア人の料理監督が、イタリア料理とアメリカンダイナーを見事に融合。サラダ、カルパッチョ、ステーキ、締めのティラミスまでどれも絶品だし、ディナーだけでなく朝食やブランチも外れがなく、あまりに美味しかったので連日お世話になった。カフェバーのTwo Zero Threeは、店内に飾られたレコードや「God Save the Queen」「London Calling」「Rich Girl」といった(割と直球な)メニューのネーミングセンスに、音楽ファンとしてはグッとくるものがあるはず。 最初に部屋へ入ったとき、アタッシュケース型レコードプレイヤーの上に載せられたお菓子のプレートに、「シカゴへようこそ!」と日本語で書かれた手紙が添えてあったのが忘れられない。こんなふうに温かく出迎えてくれるホテルを好きにならないはずがなく、あのときの写真を見返すたびに、シカゴという街のやさしさを思い出すことになるだろう。 ※【シカゴ音楽旅行記】は全4記事の連載。続きは以下をクリック。 Vol.1:歴史と文化を受け継ぐライブハウス、夜を彩るブルースとジャズの老舗 Vol.2:パンク愛から生まれた「遊園地みたいな」音楽フェス・Riot Fest Vol.3:ストーンズも憧れたブルースの聖地、チェス・レコード訪問記 Vol.4:必ず行きたいグルメと観光、音楽ファンを魅了するおすすめホテル(※本ページ) ※取材協力:ブランドUSA、シカゴ観光局
Toshiya Oguma