CDベイビー創業者が直伝「人が感動する瞬間」とは やたらとデカい話をしがちな起業家の盲点
それほど多くのものは必要としない。この後紹介するメールは、そんなデレクの生きざまを見事に表している。 ■事業を始めるということは… デレク:事業を始めるということは、あなたの手によって小さな世界を生み出し、その中の行動規範をあなた自身がコントロールできるということだ。 よそがどうしているかは関係ない。あなたの小さな世界の中では、あなたが思うように創り上げればいいんだから。 僕がCDベイビーを立ち上げたとき、注文を受けるたびに、CD発送日を知らせる自動メッセージが相手に送られるようになっていた。
初めはごくありふれた内容にしていた。 「ご注文の品は、本日発送されました。未着の場合は、こちらまでご連絡ください。お買い上げいただき、ありがとうございました」 数カ月が過ぎて、僕は、これでは人をクスッとさせるっていう僕の使命が果たされていないと感じた。もっと良くできるはずだって思ったんだ。 それで20分かけて、次のようなおふざけメールを書き上げたんだよ。 ご注文いただいたお品は、滅菌済み手袋をはめたスタッフの手により、棚から丁重に取り出され、サテン織のクッションに鎮座いたしました。
50名の人間がチームを組んで、あなた様のCDをくまなく検(あらた)め、出荷前に、ベストな状態であることを確認いたしました。 日本からやって来た包装の達人が、キャンドルをともし、ほかのスタッフが固唾をのんで見守る中、貴CDを、最上の金文字入りの箱にお入れしました。 私たちスタッフは、みんなで出荷を盛大にお祝いし、一団となって郵便局まで向かいました。ポートランドの街全体をあげて、「良い旅を」と合唱し、貴CDを送り出したのです。
わが社の専用ジェット機に乗せられて、今日6月6日金曜日現在、あなた様の元へと向かっています。 CDベイビーでのお買い上げに対し心よりお礼を申し上げます。 ショッピングを十分お楽しみいただけたことを確信しております。あなた様のお写真は、お店の壁に「今年の顔」として飾らせていただきます。 あなた様に、またわが社のサービスをご利用いただく日が、待ち遠しくてなりません。 ■たった1通のメールの抜群の効果 デレク:このおふざけメールが、注文するたびに届くというわけさ。お客からのウケが良くて、「Private CD Baby jet」で検索すると、2万件以上の検索結果が表示されるんだ。
メールを受け取って気に入ってくれた誰かが、自分のサイトで公開したり、友人にシェアしたりしてるんだな。 1通のおふざけメールが、数千人もの新しいお客を連れてきてくれた。 みんなビジネスを大きくさせたいと思うと、どうしても世界を変えるような、ものすごく大きなことを考えようとするんだよね。壮大なアクションプランを思い浮かべたりしてね。 でも、知っておいてほしいんだ。周りの友だち全員に伝えたくなるくらい、あなたが感動することって、得てしてこんなちょっとしたことだったりするんだよ。
ティム・フェリス :起業家、作家