半導体の王者から“劣等生”へ…インテルCEO解任が「日本の半導体産業の再興」を予感させるワケ
● 水平分業の加速とインテルの凋落が鮮明に スマホ分野では、アップルがわが国の電子部品メーカーから基板などを調達し、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の中国企業(フォックスコン)などに製造を委託した。アップルは、自前でiPhoneなどの性能に適したチップを設計開発し、TSMCに製造を委託した。 それに伴い、世界的に水平分業体制を敷く企業は増えた。米国のIT先端企業などが水平分業体制を整備する中で、わが国の企業は超高純度な半導体関連の部材、精密度の高い半導体製造装置や工作機械などの供給で重要な役割を担った。 TSMCは、わが国の企業が製造するシリコンウエハーなどを調達することで、エヌビディアが設計開発を行ったGPU(画像処理半導体)などの良品率を向上させた。TSMCは受託製造業に徹する。その製造ラインを活用し、GAFAMは自前で開発したAIチップを手に入れ、AIなどのトレーニングを増やすという好循環が出現した。足元、英アームの設計図を用いてAIに対応したPC向けの半導体を開発するIT先端企業も多い。 わが国の企業は精密なモノづくりの力に磨きをかけ、国際的な水平分業体制の持続性向上に寄与した。高い製造技術にアクセスするため、対日直接投資を積み増す主要IT先端企業は増加傾向だ。米国などのIT先端企業がソフトウエア開発分野に集中する。台湾や韓国などの企業がハードの受託製造を担うために、わが国の製造技術は必要不可欠ということだ。 インテルも、水平分業に対応するために改革を行った。21年1月、ボブ・スワンCEO(当時)は退任し、新たにゲルシンガー氏がトップに就任した。16年ごろから、インテルは回路の線幅を10ナノレベルに微細化することが難しくなった。インテルの株主など利害関係者は、半導体の製造とクラウドコンピューティングなどのソフトウエアの両方に精通した、プロ経営者のゲルシンガー氏に挽回を託した。 ゲルシンガー氏は、TSMCの製造技術を頼りAIチップなどの供給を目指した。また、既存の生産能力を活用して収益を獲得するためにファウンドリー(受託製造)事業も重視した。しかし、微細化で独走状態のTSMCとの競争力の差を縮めることは難しかった。