半導体の王者から“劣等生”へ…インテルCEO解任が「日本の半導体産業の再興」を予感させるワケ
2024年7~9月期まで、インテルは3四半期連続で最終赤字に陥っている。そして12月1日付で、同社のゲルシンガーCEOが事実上の解任となった。かつて半導体業界の盟主であったインテルに、何が起きているのだろうか。目まぐるしく変わる半導体産業において、日本勢が強みを発揮し生き残るすべとは。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫) ● インテルCEOが事実上の解任のワケ 12月1日付で、米インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)が退任した。事実上の解任とみられる。同氏解任の背景には、かつて世界の半導体業界をリードしたインテルの凋落があったのだろう。 2000年代半ばあたりから、インテルは、半導体業界の環境変化に遅れるようになった。スマートホンの世界的なヒットなどを契機に、半導体業界では「水平分業」を重視する企業が増えた。各社が独自の優位性を生かし、目まぐるしい環境変化に対応するには、分業体制は相応のメリットがある。特に、先進半導体の生産を大手需要者から引き受ける受託制度が、世界の半導体業界の中で主流を占めるようになっていった。 一方、インテルは、企画・設計から生産まで一貫して自社で行う「垂直統合」にこだわった。それに伴い、半導体の需要がパソコンからスマホ、さらにAI関連への変遷に遅れてしまった。 インテルの業績は低迷し、大規模なリストラにより目先の収益を確保せざるを得なくなっている。それは、わが国企業にとっても他人事ではない。1980年代半ば、わが国のメーカーは垂直統合型でトップの地位を手に入れた。その後、日米の半導体協定、バブル崩壊などの影響から、わが国半導体メーカーは競争力を失った。 ただ、わが国の企業は、半導体の素材や製造装置などの分野で比較優位性を保った。そして現在、ラピダスが関連企業と連携して、トップクラスの半導体受託製造企業(ファウンドリー)として成長しようとしている。環境変化への対応が、企業の生き残りに最も大切な能力になることは確かだ。