iDeCo掛金7,000円増額で老後資金はいくら増やせるか
2024年に改正された新NISAに続き、兄弟制度ともいうべきiDeCoにも手が加えられています。 今後は毎月の掛け金を7,000円増額する改正に向かうようです。今回は2025年に注目を集めそうなiDeCoについてあらためて制度の解説と老後資金はいくらまで増やせるか考えてみます。 ■掛金7,000円増加。そもそもいくら積立てできる? iDeCoは働き方によって掛金の上限が変わります。会社員の拠出額を細分化せず拠出上限を揃えると、わかりやすい制度になりそうです。 1.現在の拠出上限 自営業者等 6.8万円/月 81.6万円/年 企業年金の無い会社員 2.3万円/月 27.6万円/年 企業年金の有る会社員 2.0万円/月 24.0万円/年 公務員 2.0万円/月 24.0万円/年 専業主婦(夫) 2.3万円/月 27.6万円/年 2.改正案での拠出上限 自営業者等 7.5万円/月 90.0万円/年 企業年金の無い会社員 3.0万円/月 36.0万円/年 企業年金の有る会社員 2.7万円/月 32.4万円/年 公務員 2.7万円/月 32.4万円/年 専業主婦(夫) 3.0万円/月 36.0万円/年 3.現在の拠出上限での累積投資額 自営業者等 6.8万円/月 81.6万円/年 ・10年 816万円 ・20年 1,632万円 ・30年 2,448万円 ・40年 3,264万円 企業年金の無い会社員 2.3万円/月 27.6万円/年 専業主婦(夫) 2.3万円/月 27.6万円/年 ・10年 276万円 ・20年 552万円 ・30年 828万円 ・40年 1,104万円 企業年金の有る会社員 2.0万円/月 24.0万円/年 公務員 2.0万円/月 24.0万円/年 ・10年 240万円 ・20年 480万円 ・30年 720万円 ・40年 960万円 4.改正案での拠出上限 自営業者等 7.5万円/月 90.0万円/年 ・10年 900万円 ・20年 1,800万円 ・30年 2,700万円 ・40年 3,600万円 企業年金の無い会社員 3.0万円/月 36.0万円/年 専業主婦(夫) 3.0万円/月 36.0万円/年 ・10年 360万円 ・20年 720万円 ・30年 1,080万円 ・40年 1,440万円 企業年金の有る会社員 2.7万円/月 32.4万円/年 公務員 2.7万円/月 32.4万円/年 ・10年 324万円 ・20年 648万円 ・30年 972万円 ・40年 1,296万円 月7,000円増額ですから、年換算で84,000円です。 拠出増加額は 10年 84万円20年 164万円30年 252万円40年 336万円となります。 ■iDeCoの3つの節税効果 iDeCoは複数の優遇税制がセットになっています。(1)拠出時は全額所得控除、(2)運用益の非課税、(3)受取時の退職所得控除と公的年金等控除と考えうるメリットがパッケージ化されています。 節税額は (1)現在の拠出上限での節税額 自営業者等 6.8万円/月 81.6万円/年 参照:所得税率5%、住民税率10%の場合 ・10年 816万円×15%=122.4万円 ・20年 1,632万円×15%=244.8万円 ・30年 2,448万円×15%=367.2万円 ・40年 3,264万円×15%=489.6万円 参照:所得税率20%、住民税率10%の場合 ・10年 816万円×30%=244.8万円 ・20年 1,632万円×30%=489.6万円 ・30年 2,448万円×30%=734.4万円 ・40年 3,264万円×30%=979.2万円 企業年金の無い会社員 2.3万円/月 27.6万円/年 専業主婦(夫) 2.3万円/月 27.6万円/年 参照:所得税率5%、住民税率10%の場合 ・10年 276万円×15%=41.4万円 ・20年 552万円×15%=82.8万円 ・30年 828万円×15%=124.2万円 ・40年 1,104万円×15%=165.6万円 参照:所得税率20%、住民税率10%の場合 ・10年 276万円×30%=82.8万円 ・20年 552万円×30%=165.6万円 ・30年 828万円×30%=248.4万円 ・40年 1,104万円×30%=331.2万円 企業年金の有る会社員 2.0万円/月 24.0万円/年 公務員 2.0万円/月 24.0万円/年 参照:所得税率5%、住民税率10%の場合 ・10年 240万円×15%=36万円 ・20年 480万円×15%=72万円 ・30年 720万円×15%=108万円 ・40年 960万円×15%=144万円 参照:所得税率20%、住民税率10%の場合 ・10年 240万円×30%=72万円 ・20年 480万円×30%=144万円 ・30年 720万円×30%=216万円 ・40年 960万円×30%=288万円 (2)改正案での節税額 自営業者等 7.5万円/月 90.0万円/年 参照:所得税率5%、住民税率10%の場合 ・10年 900万円×15%=135万円 ・20年 1,800万円×15%=270万円 ・30年 2,700万円×15%=405万円 ・40年 3,600万円×15%=540万円 参照:所得税率20%、住民税率10%の場合 ・10年 900万円×30%=270万円 ・20年 1,800万円×30%=540万円 ・30年 2,700万円×30%=810万円 ・40年 3,600万円×30%=1,080万円 企業年金の無い会社員 3.0万円/月 36.0万円/年 専業主婦(夫) 3.0万円/月 36.0万円/年 参照:所得税率5%、住民税率10%の場合 ・10年 360万円×15%=54万円 ・20年 720万円×15%=108万円 ・30年 1,080万円×15%=162万円 ・40年 1,440万円×15%=216万円 参照:所得税率20%、住民税率10%の場合 ・10年 360万円×30%=108万円 ・20年 720万円×30%=216万円 ・30年 1,080万円×30%=324万円 ・40年 1,440万円×30%=432万円 企業年金の有る会社員 2.7万円/月 32.4万円/年 公務員 2.7万円/月 32.4万円/年 参照:所得税率5%、住民税率10%の場合 ・10年 324万円×15%=48.6万円 ・20年 648万円×15%=97.2万円 ・30年 972万円×15%=145.8万円 ・40年 1,296万円×15%=194.4万円 参照:所得税率20%、住民税率10%の場合 ・10年 324万円×30%=97.2万円 ・20年 648万円×30%=194.4万円 ・30年 972万円×30%=291.6万円 ・40年 1,296万円×30%=388.8万円 一括受取時に利用する退職所得控除は拠出年数に応じて大きくなります。 10年:10年×40万円=400万円20年:20年×40万円=800万円30年:10年×70万円+800万円=1,500万円40年:20年×70万円+800万円=2,200万円退職所得=(受取金額―退職所得控除)÷2として計算します。 拠出期間が40年、受取金額が3,000万円の場合、(3,000万円-2,200万円)÷2=400万円が課税対象となります。400万円は総合課税となり、給与や年金と合計して税率が決まります。 ■気になる退職所得控除の行方 iDeCoの肝は何と言っても退職所得控除です。今後、退職所得控除が見直されて減少するようなことがあれば、iDeCoに対する増税となります。会社員や公務員の人は早めに拠出を増やしても問題なさそうですが、自営業者等の場合は将来の退職所得控除の金額の動向を確認してからiDeCoの増額を検討しても遅くないでしょう。 高橋 成壽(たかはし・なるひさ)/1978年神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、2001年にFP資格を取得。投資や保険などのキャリアを経て、2007年にFPとして独立。自身の投資経験と世界の金融ネットワークを活用し、シングルマザーから上場企業の経営者まで、1人ひとりに合わせたお金のアドバイスを提供している。有料のFP相談「 寿FPコンサルティング 」、無料のマネー相談専門家マッチング「 ライフデザインセンター 」を運営。2020年より東海大学非常勤講師として学生向け金銭教育に従事。著書に『ダンナの遺産を子どもに相続させないで』(廣済堂出版)がある。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
高橋 成壽