ノーベル化学賞・ハサビス氏が語った囲碁との出会い、AIとの向き合い方 マンスリー囲碁
「囲碁の持つ数学的な美しさにひかれた」。囲碁ソフト「アルファ碁」の開発者で、今年のノーベル化学賞を受賞したデミス・ハサビス氏(48)が11月21日、東京都千代田区の日本棋院を訪れ、一力遼棋聖(27)=名人・天元・本因坊=と対談しながら囲碁との出会いを語った。 英国出身のハサビス氏は4歳からチェスに親しみ、13歳でトッププレーヤー入り。コンピューターサイエンスを専攻していたケンブリッジ大の学部生時代に囲碁を打つようになった。 チェスと比べ「囲碁はより複雑」と感じていたハサビス氏。1997年にスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」がチェス世界王者を破ったことに衝撃を受け、「自分自身で学ぶAI(人工知能)」を目標としたアルファ碁の開発を志すようになったという。 一力棋聖は対談で、2016年のアルファ碁と世界トッププロのイ・セドル氏(韓国)の五番勝負でアルファ碁が1敗したことを挙げ、「AIの予想にない手を打たれてそこから崩れた印象がある」と言及。「今はどのAIも人間よりレベルが高いが、部分部分では人間の方が上回るところもある。自分自身はAIを参考にはしているが、依存はしていない」と語った。 今後10年間の展望として、「囲碁に限らず、人間の専門家が知識やスキルを組み合わせてAIを活用していくことになる」とも述べたハサビス氏。AI活用で先を行く囲碁界だからこそ、AIとの向き合い方を社会に示す手本となれるかもしれない。(村嶋和樹)