「日本の人手不足」が想像以上に深刻なウラで、じつは「働く人の行動」が大きく変化していた
この国にはとにかく人が足りない!個人と企業はどう生きるか。人口減少経済は一体どこへ向かうのか。 【写真】いまさら聞けない日本経済「10の大変化」の全貌… 話題書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。 〈過去数十年の間、大量の労働力が労働市場に流入する中で、多くの企業は必要な労働力を安い価格でいくらでも確保できる環境にあった。 しかし、ここにきて企業を取り巻く環境も大きく変わり始めている。人手不足が急速に深刻化しているのである。 人手不足の深刻化に伴い、賃金を含む労働条件の抜本的改善なくしては、企業が事業に必要な人員を確保することは難しくなってきている。〉(『ほんとうの日本経済』より) 近年、日本経済が変化している。 人口減少が大きな影響を与えているのだ。具体的にどのように変わっていくのだろうか。 〈たとえば、この十数年で労働者の行動は大きく変容した。 近年、女性や高齢者の就業率は急速に上昇し、女性も高齢者も働くことは当たり前になっている。 また、長時間労働は激減しており、多くの人がこれまでよりも短い労働時間で働くようになった。 賃金はといえば、確かに年収水準でみれば大きく上がってはいない。あるいは、この2~3年の単位でみれば、実質賃金は下落している。 しかし、もう少し長い目で実際のデータを観察していけば、これまでよりも短い労働時間で以前と遜色のない給与を得ている人も多く存在している。 時給水準は多くの人が実感しているよりもしっかりと上がってきており、近年の賃金の基調はこれまでとは明らかな変化が見られる〉(『ほんとうの日本経済』より) 〈これまで世界の人口が長期的に増加を続けていた事実からもわかるように、近代の世界経済を振り返れば、経済というものは基本的には人口が増加している状態のもとでそれと並行して成長をしていくものだという暗黙の前提があったといえる。 しかし、日本の人口はいままさに調整局面から減少局面へと移行しつつある。そうであれば、人口減少とともに歩むこれからの日本経済の構造はこれまでのそれとは異なるものになる可能性が高い。 近代で日本のような大きな経済規模を有する国において、人口が持続的に減少した事例はほかに類を見ない。そう考えれば、人口減少が経済にどのような構造変化を及ぼすのかということは、これまで必ずしも自明ではなかったと考えられる。〉(『ほんとうの日本経済』より) 〈データを分析していくと、足元の労働市場では人手不足の深刻化や賃金上昇の動きが広がっていることがわかる。さらに、それは2010年代半ば頃から顕在(けん ざい)化していることがわかる。 これには日本銀行による大規模金融緩和や政府の財政出動が影響している可能性が高い。しかし、それだけではないだろう。現在の経済の変化について、一時的な政策効果と構造的な変化とを峻別することは難しいが、その根本には人口減少や高齢化といった人口動態の変化があるはずだ。 これまでのデフレーションの時代において、企業が最も警戒してきたのは需要不足の深刻化であった。つまり、人口減少によって国内市場が縮小すれば、将来、企業間で顧客を奪い合うことになるのではないかという懸念が企業の間にあった。 しかし、いざふたを開けてみると、多くの地域や業種で需要不足が深刻化する展開にはならなかった。 そうではなく、近年判明してきたのは、人口減少と少子高齢化が引き起こす経済現象の正体は、むしろ医療・介護などを中心にサービス需要が豊富にあるにもかかわらず、それを提供する人手が足りなくなるという供給面の制約だったのである。 現状経済に起きている変化は、景気変動に伴う一過性の現象だけではなく、構造的なものである可能性が高い。 そう考えれば、今後もその時々の景気循環による影響を受けながらも、日本経済の供給能力が十分に高まっていくまでのしばらくの間、現在の経済のトレンドは続いていくとみられる。〉(『ほんとうの日本経済』より) つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部