「筋トレを一切せず」 アームレスリング日本王者に。“最強の腕”を作った“最高の環境”
石材店での仕事がトレーニングになっていた
では、どのように鍛えているのか。普段の生活にその秘密があった。宍戸さんが2年前から働いているのは、福島県内の石材店だ。 「アームレスリングで知り合った人が石材店の経営者で。転職を考えた時期に人を募集していると聞き、採用してもらいました。志望動機は『仕事がトレーニングに直結する』と思ったからです(笑)」 石材店であれば、通常業務がトレーニングになると考えたのだ。実際の仕事内容を聞くと、かなりハードな肉体労働のようである。 「5~6キロはあるハンマーを振り回すことも多く、まず手首が鍛えられますね。そして、重たい墓石を扱うので腕や背中と行ったアームレスリングに必要な筋肉がつきますね。石の重さは、持ち上げるもので80~90キロくらい、横になっているものを起こすのであれば200キロくらいです」
一般人に勝負を挑まれることが多々ある
こうして、日々働きながら屈強な肉体を手に入れた。その肉体は街中でもかなり目立つようだ。 「居酒屋で飲んでいると、だいたい『何かスポーツやってるの?』と声をかけられます。『アームレスリングやってます』と答えると、ほぼ100%『1回やってみよう』という流れに……」 アームレスリング日本最強の男に、たまたま隣で飲んでいた一般人が敵うはずはない。全勝かと思いきや、プロならではの配慮が存在していた。 「勝つことはないですよ。ちゃんとやろうとすると、相手が怪我してしまうので(笑)。ひどい時は、骨が折れてしまうこともあるので、ただ勝負を受けるだけです」
世界大会で「パワーの差を感じた」
日本では敵なしとなれば次は世界。2023年、日本代表として初めて海外での世界大会に出場した。その結果は「右が9位」で「左が10位」だ。 「実は、両手でもエントリーできるんです。私も普段は右だけのエントリーが多いんですけど、初めての世界大会だったので雰囲気などもしっかり経験したくて。左のほうは全く練習してなかったんですが、両手でエントリーしてみました」 右で世界9位はもちろんすごいものの、全く練習していない左でも10位とは……。まさに天賦の才能というべきかもしれない。ただ、現状に胡坐をかくつもりはない。この大会を経て、世界との大きな壁を感じ、決意したことがあった。 「筋トレしようと思いました(笑)」 筋トレをせず日本一に上り詰めた宍戸さんにとって、大きなターニングポイントとなった。 「もちろんパワーの差を感じました。それに、取材をしていただくと腕の太さを取り上げてもらうことが多いんですが、海外に行くともっと太い人も当たり前にいて、恥ずかしくなるくらいだったんですよ。海外の選手は、プロとして契約してお金をもらい、さらに賞金も稼ぐという人もいますので、モチベーションもレベルも違います。もう一段レベルアップは必要ですね」