大川内直子 会社は「部族」? 文化人類学をビジネスに生かす
「アイデア」には開拓の余地がある
ところで、独立後に書いた本が『アイデア資本主義 文化人類学者が読み解く資本主義のフロンティア』(実業之日本社)です。 資本主義の歴史を一言で表すと、フロンティアに進出し、開拓する歴史です。しかし、地球上に地理的なフロンティアがなくなってくる中で、成長の限界が指摘されるようになりました。でも、資本主義というのは簡単にやめられるものではありません。なぜなら、資本主義は自然に始まったもので、個々人の「将来のために現在の消費を抑制し、投資しようとする心的傾向」から生じているためです。 空間・時間・生産=消費の各領域でフロンティアは消滅しつつありますが、資本主義は終焉(しゅうえん)を迎えるどころか、内に向かう発展、すなわち「インボリューション」の段階に移行しています。その中で、人間の内なるフロンティアである「アイデア」にはまだ拡大の余地があります。 アイデア資本主義では、アイデアそのものが投資の対象になります。例えば、行動観察によって消費者のインサイト(行動の背景にある心理)を探り出せれば、新たな製品・サービスを生み出しやすくなります。このように人類学的考察を基に、資本主義の最終段階を論じたのが『アイデア資本主義』です。 次回からはビジネスパーソンに役立つ文化人類学の本を紹介していきます。 取材・文/三浦香代子 取材・構成/桜井保幸(日経BOOKプラス編集) 写真/木村輝