専門医が教える、中高年になると増える尿もれ・頻尿・夜間頻尿の悩みを自力で改善する方法
骨盤底筋を鍛える基本のトレーニング
幸いにも、衰えた骨盤底筋は、簡単なトレーニングによって強化することが可能だ。 伊勢呂医師は、本書でいくつかの方法を挙げているが、ここでは「基本のトレーニング」を取り上げよう。1日6セット、毎日行うことで2~3か月で効果が現れてくるそうだ。 始める前に以下の図を見て、どの部分を締めるのかを把握する。そうすればトレーニングの効果は高まる。 では、トレーニング開始。イラストを参考に、インストラクションにしたがってやってみよう。 1.あおむけになる。足を肩幅に開き、膝を少し立てる。手は体の横に置き、リラックスする。 2.男性は陰茎の付け根と肛門を、女性は尿道と膣、肛門を意識し、口から息を吐きながらおへその方に引き上げるように、10秒数える。 3.力を抜いて5~10秒間休む。2と3を10回繰り返して1セットとする。 1~3の動きで「遅筋」が鍛えられる。同じ要領で、2と同じ場所を1回につき1~2秒間キュッと締める動きを3回行う。5~10秒間休み、同じ動作を10回繰り返す。これで「速筋」が鍛えられる。遅筋と速筋のトレーニングを組み合わせると、さらに効果的。
水分摂取を適量に抑えることも重要
伊勢呂医師は、日常的に心がけておくべき生活習慣についても言及する。 例えば、尿量のコントロール。健康によかれと、水をよく飲む人は多いが、(夜間)頻尿の原因となりうるから注意が必要だ。そのための対策として、1日の水分摂取量の目安を守るようアドバイスする。その目安とは、自身の体重×20~25ml。例えば体重が68キロであれば、68×20~25=1360~1700mlとなる(夏場はもう少し増やす)。一度に100~200mlの分量とし、1日の間で小分けして飲むようにする。また、就寝の3時間ほど前から水分を控えるようにする。 水分といっても、カフェインを含むコーヒーや緑茶には利尿作用があり、膀胱を刺激する作用もあって、頻尿の原因となる。そのため、カフェイン飲料を飲みたいときは、1日1~2杯にとどめる。さらに唐辛子のような辛みのある香辛料や酸味の強い柑橘類も、膀胱を刺激する。よって、こうした食べ物を口にする場合は、朝食か昼食に限るようにする。 こうした飲食物に関する注意事項とは別に、意外なメソッドもある。それは、弾性ストッキングの着用で、下肢がむくみやすい人にすすめられている。むくみとは、日中に重力の影響で下肢にたまった水分や血液のこと。夜になって就寝すると、これは上半身に戻っていき、尿量が増える一因となる。そこで、日中は弾性ストッキングをはいて、むくみを防止することで、夜の頻尿を抑えることができる。なお、弾性ストッキングは、「医療用」「血行促進」「むくみ対策」などと表記のあるものを選ぶ。 * * * このように本書には、尿にまつわる不調を自力で改善する方法が、たくさん収載されている。日頃、こうしたトラブルで悩んでいるなら、一読してできそうなことからやってみるといいだろう。 本書内イラスト:さいとうあずみ 【今日の健康に良い1冊】 『尿もれ・頻尿・夜間頻尿 尿トラブルの治し方』 伊勢呂哲也監修 定価1650円 Gakken 文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagramに掲載している。
サライ.jp