老舗メゾンの歴史と進化を物語る優美なるロゼ・シャンパーニュ「ルイ・ロデレール クリスタル・ロゼ 2014」
“プレステージ・シャンパーニュの筆頭”とも称され、その類稀なる美しさでグラスを手にする人を瞬時に魅了するのが「ルイ・ロデレール クリスタル・ロゼ」。今年、そのロゼの誕生から50周年を迎えた。節目の年を祝うべく、7代目当主と副社長兼醸造責任者が10月に来日、”麗しきロゼの物語”を語ってくれた 20年以上前からオーガニック栽培に取り組んでいるメゾンの自社畑
淡いロゼ色のグラスの中から飛び出してくるのは、オールドローズの花束を思わせるアロマやラズベリーのリキュール、甘いスパイスとスモーキーなニュアンス。儚さを感じる繊細な果実味とピュアで凜とした酸味も魅惑的。「この世にこんなにも美しいシャンパーニュがあるなんて」と、耽美的な気分にさせられるのが「ルイ・ロデレール クリスタル・ロゼ 2014」だ。上品さとセンシュアリティを併せ持ち、限りなく優美。 「ルイ・ロデレール クリスタル・ロゼ 2014」、フランス・シャンパーニュ地方。ピノ・ノワール55%、シャルドネ45%。熟成期間8年以上チェリーやカシス、野イチゴの香り。ラズベリーのリキュールも特徴的。豊かな果実味とピュアな酸味。750ml ボックスつき¥114,400 「クリスタル」が生まれたのは、19世紀後半、ロマノフ王朝華やかなりし時代のこと。ロシア皇帝アレクサンドル2世がフランスのルイ・ロデレール社に「自らの身の安全を守ってくれるボトル入りのシャンパーニュを」と特注したことに始まる。瓶底の窪みに爆弾が隠せないよう、ボトルの底をフラットにし、すべて透けて見えるようにボトル素材にはクリスタルが用いられた。こうして「クリスタル」は1876年に誕生したのだ。 それから約100年後、6代目のジャン=クロード・ルゾー氏がメゾンの新たなポートフォリオに加えたのが「クリスタル・ロゼ」だ。7代目当主のフレデリック・ルゾー氏はこう語る。 「父は、とても情熱的でエネルギーに満ち溢れた人でした。当時、シャンパーニュの創作には何よりブドウの樹が重要であることを再認識し、テロワールを優美に表現すべく、ロゼを造ることに挑戦したのです」。 ジャン=クロード・ルゾー氏は、最良のピノ・ノワールを産出するアイ村と、“シャルドネの聖地”コート・デ・ブランのアヴィーズ村とル・メニル・シュル・オジェ村の卓越した畑を選び出し、1974年収穫のブドウを使用して最初の「クリスタル・ロゼ」を誕生させた。 特筆すべきはその造り方だろう。メゾン独自の「アンフュージョン(浸漬)」という手法で醸しているのだ。これは、発酵前に果皮と果汁のスキンコンタクトを行って香りと色を抽出するというもの。淡い色合いと繊細な味が理想的なレベルで実現できるという。副社長兼最高醸造責任者のジャン=バティスト・レカイヨン氏はこう語る。 「2008年にワイナリーを新設して以来、最先端の設備が整えられたことで、より緻密な作業ができるようになりました。果実を破砕せずにコールドマセレーション(4℃くらいの低温で醸すこと)をしていますが、これで優しくゆっくりと、繊細な色合いや豊かなアロマを引き出すことができるのです」。 この「アンフュージョン」という手法は、もとよりメゾンで行われてきたものだが、レカイヨン氏が最高醸造責任者になってからは、その工程がより細やかになったという。 「その理由は、実は日本にあります」とレカイヨン氏は笑顔を見せる。何度も来日する中で日本のお茶と出合い、職人たちが茶葉を優しく醸すことがインスピレーションの源になったと話す。「クリスタル・ロゼ 2014」は、緻密な仕事によって生まれるシャンパーニュなのだ。