「どうせ私なんか」という言葉に隠された心理と、全ての不安を吹き飛ばす「驚きの方法」
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第42回 『「ほんの少しでいい」…「ありたい自分」と「今ある自分」にギャップを抱えるあなたにアドバイス』より続く
「今ある自分」を低くする理由なんかない
まれに「ありたい自分」が「今ある自分」より低い人がいます。 充分素敵なのに、「私なんかダメだし」「私なんかバカだし」と、「今ある自分」をとても低くしてしまう人です。 自分に自信がなかったり、不安な人がこうなりやすいです。 まずは「今ある自分」の素晴らしさにひとつひとつ気付いて、「今ある自分」のレベルを自覚しましょう。「他の人や他のことをじっくり見る」で書いた、「毎朝ちゃんと起きていて、ゴミを出して、ちゃんと歯をみがいて……」ということですね。 間違いなく、小さな、でも素敵なことを君はしているはずです。 「今ある自分」を低くする理由なんかないのです。 でも、傷つきたくないから、「今ある自分」を低くする人もいます。
どうして自分を低く見るのか
テストが終わった後、「最悪!」とか「失敗した!」「落ちた!」なんて叫んだことはあるかな? わりと多くの人が言っているよね。君はどうだろう? テストが終わった後、「まあまあかな」とか「まあ、できたんじゃないの」と言ったのに、実際は点数が悪いと哀しい気持ちになるよね。うんと傷つく。 それを避けるには、「今ある自分」を低くして、先に「最悪!」と叫べばいいんだ。 こう言っておくと、本当に最悪の時も、ショックが和らぐだろう。先に言っておくと、本当にそうなった時に、なんとか耐えられる気がするんだよね。 「私ってバカだから」と言う人は、同じ気持ちでしょう。 周りに「お前、バカだな」と言われる前に自分で先に言っておけば「知ってるもん。だから、自分で言ってるもん」とショックを和らげられる。 「どうせうまくいかないから」とか「試合に勝つわけないんだ」と言うのも、そうなった時に激しく傷つかないために、あらかじめショックを先取りしているんだと思う。 その気持ちはよく分かる。でも、そこで終わってしまうと、「どうせ私なんかダメだから」の状態から抜けられないと思う。 「今ある自分」が、「ありたい自分」よりうんと低い状態なんだね。