<上海だより>滴水湖(2)赤壁の戦い・楼船に最新空母模型も 航海博物館
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前回お伝えした滴水湖の付近には、船と航海の歴史を展示する上海中国航海博物館(以下、航海博物館)という大型の施設があり、子どもを連れたファミリー層から人気です。しかし、展示内容は文明の歴史が長い中国ならではの深みがあり、子ども向けにとどまらない充実した展示を楽しめます。
この航海博物館は、建築面積は東京ドームと同等の約4万6千平米もある大型施設で国家級航海博物館として指定されており、2010年7月にオープンしました。設計者は滴水湖と同じくドイツのGMP社で著名建築家のマインハルト・フォン・ゲルカン氏が担当し、巨大なマストをイメージさせるシンボリックなデザインが印象的です。
館内に入るとまず目に入るのが、中国四大古船の一つで、福建や浙江近海の特色である「福船」です。長さは31メートル、幅は8.2メートルと、船体自体の高さは9メートルでメインマストは27メートルもあり、古代船の大きさに圧倒されます。福建という地域は、三国時代から造船業が盛んな地域として発展しましたが、福船という名称自体は明の時代から使われ始めた戦艦の呼称です。展示されている福船は当時の材料を模して復元されたもので、実際に航海することも可能だそうです。
常設展の目玉である航海歴史館は見所が多いです。最初期のいかだから、宋や元の時代の船の模型、当時のオールや方位磁針、碇などの展示を楽しむことができます。ちなみに、方位磁針といえば、一般的には北を示すものとして使われています。しかし、中国語では「指南針」と呼び、南を示すように色が塗られています。 もちろん、仕組み自体は同じなのですが、中国では「天子は南面する」という考え方があり、宮廷はもちろん、伝統的な家の造りも南を向くようになっており、南という方角を示すことが重要視されています。一方、西洋では方位磁針が伝わる以前は方角を知るために北極星などの星を見ることで北を判断していたために、北という方角が重要視されていたとされています。このような道具一つを見るだけでも、中国人の考え方を理解することができるのは興味深いです。