新型レクサスLBXは“高級”であるのか? 新しいコンパクトSUVの価値を考える
新型レクサス「LBX」は、果たして“小さな高級車”であるのか? 試乗した今尾直樹が考えた。 【写真を見る】新型LBXの内外装など(19枚)
かつての日本車と比べれば驚くほどスタイリッシュ
レクサスが昨年末に発売した、同ブランド初のBセグメントのコンパクトSUVがLBXである。ごく大雑把に申し上げると、トヨタ「ヤリス・クロス」のレクサス版。しかして単なるヤリス・クロスのレクサス版ではない。見た目が違うのは一目瞭然。プレミアムブランドたるレクサス独自の技術が投入されてもいる。 第一に骨格が違う。「TNGA-B」をベースとするプラットフォームは、ホイールベースを20mm延ばし、前後トレッドは55mmも広げている。クロスオーバーなのに前席乗員のヒップポイントを下げている。重心を低めると同時に、乗用車っぽく足を伸ばすドライビングポジションに変更している。 ヤリス・クロスに較べると全高は35mm低い。その一方、最低地上高はヤリス・クロスと同等の170mmが確保されている。クロスオーバーSUVのようでクロスオーバーSUVではない。ベンベン。それは何かとたずねたら、レクサスLBX! というクロスオーバーな立ち位置の小型車がLBXなのだ。このクラスとしては異例にファットで大径の225/55R18サイズのタイヤを装着することで、SUVらしからぬワイド&ローなスタンスを実現してもいる。 たとえば、フォルクスワーゲンの小型SUV、「T-Cross」の3サイズ(全長×全幅×全高)は4140×1760×1575mm、ホイールベース2550mmである。試乗車のレクサスLBX“Relax(リラックス)”は、4190×1825×1545mm、ホイールベース2580mm。つまり、50mm長くて、65mm広く、30mm低い。昔の国産車はたいていヨーロッパ車よりナローでホイールベースが短くて、ずんぐりむっくりの5頭身という感じだったけれど、21世紀のわれらがレクサスLBXは、同クラスのヨーロッパ車よりホイールベースが長い、いわば八頭身。エンジン横置きの前輪駆動とは思えぬほど、リヤのフェンダーはマッチョなテイストで、がっしりした下半身に小さめのキャビンがのっかっている。居住空間よりもスポーティなシルエットが優先されている。えっへん。ホイールなんて、フォルクスワーゲンT-Crossの16インチに較べると、2インチもでっかい。 室内はパーソナルカーとして大切なタイト感が強調されている。高級ブランドのユーザーは、自動車に乗るときぐらいは少々窮屈なくらいのほうがよいのである。自動車というのは馬車の代わりなのだ。