NYのセレブ夫婦に突然の亀裂!? 映画『ブルックリンでオペラを』レベッカ・ミラー監督インタビュー
役者とのリハーサルはナシ、でもカメラワークのリハーサルは入念に
本作もしかりですが、過去の作品もスター俳優を起用されることが多いですよね。演出について教えていただきたいのですが、リハーサルは常にされるのでしょうか!? それとも、基本はお任せでいく感じですか? 「特に映画の場合は、シーンやその素材となるものを疲弊させたくないので、私はほとんどリハーサルをしないんです。ただ、事前に役者さんとディスカッションは大いにします。個人なり複数なりが集まってホン(台本)の読み合わせをして、そこでセリフをより自然な言葉に変える作業や話し合いをかなりしますね。ただ、そこでもシーンをクタクタにしたくないので、ディスカッションや読み合わせもそこそこで止めます。リハーサルに至っては、ほとんどやらないようにしています」 「そもそも技量のある役者さんたちを起用しているので、私が何かを言うまでもなく自分の感情や無意識みたいなものを自然に表現できる人たちです。だからこそ撮影日は、なるべく彼らに自由であって欲しいんです。面白いことに私が今まで仕事を一緒にしてきた役者のほとんどが、リハーサル嫌いな人たちばかりなんですよ。だから逆にリハーサル好きな俳優さんとは、一緒にやるのが難しいかもしれないな(笑)」 「ただビジュアルに関しては、リハーサルをとても大事にしています。つまりカメラワークのことですね。そこに役者は必要ないので役者とはリハーサルをしないけれど、ビジュアル・イメージやそれを実現するカメラワークについては、私はかなりしっかり設計したいタイプなんです」 本作の撮影監督サム・レヴイとは、『マギーズ・プラン』に続いての再タッグです。美しく味わい深い映像がたくさんありますが、特に終盤の夜のシーン、船が水面を走っていくシーンは本当に素敵でした。水上での撮影は揺れるし、色んなことに左右されてとても大変だったのでは? 「彼と再タッグを組めたおかげで関係性も深められたし、最初から互いに信頼があるからこそリスクも取れたし、とても成果が出せたと思います。まず本作で私が絶対にやってみたかったのは、2つの画角比を入れることでした。あの曳舟のシーンは、スタンダード(1:1.33という割に正方形に近い縦横比)で撮っています。他のブルックリンなどのシーンは、普通にワイドで(横長で)撮っていますが」 「とはいえ、そもそも船内が狭くスペースがあまりないので、ワイドで撮影したらどうしても壁が入ってしまうからスタンダードにした、という経緯もあります。でも、あの四角いフレームで撮ることによって登場人物たちに何かスピリチュアルな場所、他とは違う安心できる世界みたいな雰囲気が作れると思いました。だから船内シーンは全部、手持ちカメラで撮っています。狭いからもあるけれど、手持ちで撮ることによって、ブルックリンでの生活にはない緩さを感じさせられたり、そこにちょっとした官能性が生まれたと思います」