葛藤を通した成長が大切、「登校を促さない」で改善しない不登校の子への対処 スクールカウンセラー「社会を意識した対応を」
「みんなの事情を考慮した枠組み」に協力するスタンスが重要
──子どもが現実と折り合いをつけながら成長し、将来的に社会参加できるようにするには、どんな関わり方が必要なのでしょうか。 昔は「子どもは大人に合わせなさい」でしたが、今は「子どもの意向を尊重する」ご家庭も多いかもしれません。でも、これは「言うことを聞く相手」が変わっただけで、本質的には何も変わっていませんし、誰かが「不本意な我慢」を強いられる考え方でもあります。大切なのはそのどちらでもなく、「子どもや大人、みんなの事情を考慮した枠組み」にみんなが協力するというスタンスです。 例えば、うちの子どもは児童クラブで宿題をしてきますが、たまに忘れることがあります。でも宿題をしてきてくれないと、私たちが時間ギリギリの中で食事を作ったり、お風呂を入れたりしつつ、何とか適切な時間に寝かせようとしているのに、すべてが後ろ倒しになってしまいます。 だから、そういうときには「みんなで暮らしている家なんだから、お互いに協力しないと困るよ」と伝えます。もちろん、ちゃんとやってきてくれていたら「協力してくれて助かる」と感謝を伝えるのは当然です。こういう関わりを通して、子どもが「家族に属することで満足感を得る」ということがしやすくなります。 これは家庭の例ですが、学校でも同じで、みんなで「めあて」を決めるのは、それに向けてみんなが協力し合うためです。また、教員と児童生徒が話し合って校則を決めるのも、「みんなの事情を考慮した枠組み」をつくって、そこにみんなが協力していくことが大切なのです。 多くの人が思っている以上に「自分が協力することで、この集団は助かっている」という感覚は大きな充足感になります。また、この感覚は「集団から力をもらっている」という形になります。 「自分は○○ができる」といった自分の功績だけで自分を支えることも大切ですが、これだけだと限界があります。集団に所属することによって得られる充足感は、現代の子どもたちが得にくくなっているものであると思いますが、これの有無によって社会参加のしやすさは大きく変わってくるのではないでしょうか。