メタバースはまだまだ盛り上がる? 『VRChat』は大型プレイヤーの参入に日別アクティブが10万人を突破
■今年も『Vket』が開幕『シャンフロ』のFZMZは1stライブを開催 『VRChat』で夏のビッグイベント『バーチャルマーケット2024 Summer』がスタートした。HIKKY社が開催する、毎年恒例の一大展示会イベントである。今回も企業/一般ブースを問わず、多くの出展物でにぎわいを見せている。 【画像】“持ち運びできる”ぐんぴぃ まだ筆者も全会場をめぐりきれてはいないが、企業会場に関してはフォトスポットが従来よりも増えている印象を受けた。明確に「ここで撮影して!」と案内するブースが多くなっているほか、“持ち運びできる”ぐんぴぃ(春とヒコーキ)の3Dモデルや、VRアーティスト・せきぐちあいみによるアート作品など、明言せずとも写真映えしそうな箇所も多い。 そして、出展ブース以外の体験コンテンツも多い。本格的なホラーコンテンツを仕込んだり、ファッション誌のような写真を撮影ブースがあったりと、ユーザーに展示以外の思い出を提供する仕掛けが昨年よりも数多く見受けられる。夏の『Vket』の会期は8月4日までと、多少長めの期間が確保されている。VR機材が無くとも、PV単体からでもアクセスできるので、気になる人は足を運んでみるとよいだろう。 他方で、7月20日にはゲリラライブでにわかに話題となった覆面バンド・FZMZの1st VRライブが開催された。内容そのものはゲリラライブとほぼ同一だったが、ゲリラを見逃した人がよほど多かったのか、筆者が観測している限りでも770人ほどが『VRChat』のライブワールドに集まっていた。 同日に『バーチャルマーケット2024 Summer』が始まったことを踏まえれば、この規模の集客(参考までに、渋谷CLUB QUATTROが800人キャパだ)を集めたのはこの上ない成功と評して良さそうだ。 なお、7月28日には1stライブの再演も予定されている。楽曲や演奏を含め、クオリティ面では間違いのないVRライブなので、見逃した方はぜひチェックしてほしい。もちろんPC環境からでも参加できるがもし余力があればVR環境での体験をオススメする。「FZMZ」の世界観に“飲み込まれる”体験は、VRで味わえば感慨もひとしおだ。 ■「VRChatプレイヤー」は増えているのか? ところで、直近ではにわかに『VRChat』のDAU(日別アクティブユーザー数)が話題になっている。第三者による非公式のアクセス数解析サービス「VRChat API Metrics」を見ると、7月に入ってから『VRChat』のDAUは土日のピークタイムで95,000~100,000人規模に届いている。最もアクセスが集中するのはアメリカ時間の21時~24時ごろで、日本でいうところのゴールデンタイムにあたる。 その人数はもちろん、デバイス環境の比率も興味深い。PC/VR環境であるSteam版以外のアクセス数が半数以上を占めているのである。Steam版以外に該当するのは、Meta Quest単体版やAndroid版など。より手軽な環境からアクセスしている人が多いのかもしれない。もちろん、これはあくまで第三者の集計値であるため、参考値からの推測くらいに考えてもらえれば幸いだ。 一方で、日本国内でもにわかに『VRChat』新規プレイヤーが増えつつある印象だ。筆者が観測する範囲でも「初心者向けワールドに新規プレイヤーが増えている」「自分の主催するイベントに新規プレイヤーがいつもより来た」という報告をしばしば聞くようになったし、一部ではワールド訪問数の集計結果からこの傾向を示そうという試みも見られる。 VRChatの民がおすすめしてくれたワールドを見て、想像を絶するクオリティに感動するスタンミじゃぱん【VRChat】 その呼び水のひとつは、ストリーマーのスタンミだろう。本連載で紹介したあともスタンミはかなりのハイペースで『VRChat』を訪問し、その様子を配信で伝えている。各所からのリアクションを見るに、彼の訪問は比較的好意的に受け入れられているようだ。 スタンミ本人も、直近では『Meta Quest 3』を購入しているほどに入れ込んでいるようで、「今後もいろんなことを体験してそれを発信していきたいです」とSNSで発言している。新たな「外との接点」が生まれたことで、国内VRChat界隈にも大きな波が訪れているのかもしれない。 ■『Apple Vision Pro』を買ってしまった 先日、「Apple Vision Proホルダー限定Meetup #2」の取材記事が公開された。その名の通り、『Apple Vision Pro』所持者が参加できるミートアップイベントで、XR系の開発企業4社が合同で開催した。約60万円の空間コンピュータが50台以上も集う環境は圧巻の一言だった。熱気の一端が記事から少しでも伝われば幸いだ。 そして、この取材には続きがある。筆者自身もこの取材を通して触発され、『Apple Vision Pro』を買ってしまった。いまだどのようなものか輪郭すら決まっていないデバイスを、やはり自分の私物として触れながらたしかめたくなった次第だ。 一通り使ってみた感触としては、まず「MacBookの仮想ディスプレイ」と「HMD型ホームシアター」としての用途は十分に見込める。MacBookは一度連携してしまえば、同じWi-Fi下にある状態で見つめるだけで接続が完了する手軽さがあるし、13~15インチのディスプレイをさらに拡大できるのはシンプルに心地よい。そして、『Apple TV』や『Prime Video』などで映像を見る上では、両目8Kという図抜けた解像度が効力を発揮している。 アプリも豊富だが、初期のiPhoneのように玉石混交である。これらについては今後に期待しつつ、とりあえず今回は、上記の取材記事でも触れたambr社のアプリ『gogh』を取り上げよう。 7月16日に公開された『gogh』は、「アバターといっしょに作業」をコンセプトに掲げる作業支援アプリだ。スマートフォン版では自分のアバターを作り、作業部屋を選択することで、アバターがLofiミュージックを聴きながら作業を始める。ポモドーロタイマーも備わっているので、アバターと一緒に作業している感覚が得られるはずだ。部屋のレイアウトや家具・小物も自由にカスタマイズでき、一種の箱庭アプリのようでもある。 そして『Apple Vision Pro』版は、選択式のアバターとミュージック再生機能、ポモドーロタイマーを備えた常駐アプリだ。『Apple Vision Pro』の特性上、他のアプリなどと並列起動ができるのがポイント。伝わる人に伝わる表現としては2000年頃に登場したWindows用の常駐マスコットアプリ『伺か(うかがか)』が近いか。まだモノとしてはシンプルだが、作業用途には役立ちそうだ。 というわけで、今後も機会があれば『Apple Vision Pro』の機能やアプリを紹介していこうと思う。なにかおもしろいアプリがあれば、筆者にこっそり教えていただければ幸いだ。
浅田カズラ