ついにお披露目テスラ「ロボタクシー」、普及実現で「社会を変える」と断言できるワケ
ロボタクシーに期待される「ある役割」
こうした進化を遂げるテスラが満を持して送り出したのが、サイバーキャブだ。ここまで見てきたような同社の技術力であれば、ロボタクシーは当然実現可能なクルマであり、高い水準で安全も保たれるであろうことは想像に難くない。 自動運転ロボタクシーが果たす役割への期待は大きい。 実は、米国ではすでにロボタクシーが走行している。グーグルの親会社アルファベットの傘下企業ウェイモ(Waymo)が、アリゾナ州フェニックスとカリフォルニア州サンフランシスコで、自動運転レベル4での自動運転タクシーを運営しているのだ。 自動運転タクシーが有効利用される一例として、目の不自由な人が1人で外出する機会をより安心・安全に提供する期待がある。スマートフォンで呼び出せば、自分がいる場所へタクシーが到着し、決済もスマートフォンで済ませることができる。ウェイモのタクシーは、路上駐車するクルマの隙間に停める技も持ち、万一、目の不自由な人が待つ場所に停める空きを見つけられないときは、少し先に止まり「何メートル先に停まっています」と、スマートフォンへ通知する。 このウェイモの例のように、テスラが取り組むAIやロボットの開発技術も、EVとして環境負荷を低減するだけでなく、障害者を含むすべての人の移動に自由をもたらす広範な事業の後押しになっていくだろう。 既存の自動車メーカーがEVについて考える際、脱炭素への適合という観点が大きな比重を占めるであろうことから、燃料電池車(FCV)も選択肢の1つといった考えが出てくるのは当然だ。 しかし、EVの価値をより深く考察すれば、単に環境に適合した移動手段というだけでなく、健常者も障害者も区別なく、すべての人に移動の自由をもたらしたり、暮らしを支える電力の安定供給にも資する壮大な事業へ発展させていける可能性を秘める分野と言える。 テスラは、身をもってそれを体現する企業であり、単に同社の新車販売台数の多少を数字で見るだけでは、その本質を見極めることはできない。サイバーキャブで新たな領域に踏み出した同社の行く末を、期待を込めて見守りたい。
〔参考文献〕 ・Waymo、サンフランシスコにて自動運転タクシーを遂に一般開放 ~現地レポートを交え~ | SOMPOインスティチュート・プラス (sompo-ri.co.jp)
執筆:モータージャーナリスト 御堀 直嗣