ついにお披露目テスラ「ロボタクシー」、普及実現で「社会を変える」と断言できるワケ
テスラが残した「圧倒的」な功績
このように、10年を超えてEV業界をけん引し、クルマにおける新しい価値創造に努めてきたテスラにおいて、現在の事業の中核がEVであることに変わりはない。だが同社は、自動車メーカーとしてEVの1本足で経営が進められているわけではないのである。 たとえば、「スーパーチャージャー」と呼ばれるEV用の急速充電器の独自開発と、スーパーチャージャーを世界各地に設置して世界的な急速充電網を整備したという点も、過去の自動車メーカーとは大きく異なる新しい発想だ。 これまで130年を超えるエンジン車の歴史の中で、ガソリンスタンドの整備は自動車メーカーの責任ではなく、エネルギー関連企業の事業であった。しかしEVになると、自動車メーカーが深く関与する必要があることをテスラは示した。 テスラ以外の自動車メーカーは、テスラと同じような充電の基盤整備をほぼ実施していない。例外と言えるのは日産自動車で、初代リーフを日本で発売する際に、国内の販売店網に急速充電器を開発・設置することにより、顧客への充電不安を解消しようと努めた。 そのほか、東京電力が主体となって2019年に設立された企業e-Mobility Power(イー・モビリティパワー)が全国的充電網を担おうとしているが、従量性課金については実現できておらず、充電網整備においては道半ばと言える。 また近年では、ドイツのアウディが、チャージングハブと呼ぶ急速充電拠点の都市部への設置を欧州で進めており、日本でも今年4月に東京都千代田区の紀尾井町に開設されたが、これを全国展開していくという話はない。
「損害保険」から「蓄電池」まで売る強み
このように、世界的に充電網の整備はまだ道半ばという情勢の中で、米国では、テスラ以外の自動車メーカーが相次いでテスラの充電方式を採用することを発表しており、米国でテスラ方式が実質的な標準規格になる動きがある。他社が追随するほどテスラがEVを熟知し、先進的な取り組みを展開していると言えるだろう。 同社はこのほかにも、EV関連の事業として、これまでパナソニック製を採用していた車載バッテリーの自社開発を本格化し、そのための材料の精錬を自社工場で行っている。自社製のバッテリー製造については、バッテリーメーカーとして創業したBYDも強みとしているが、テスラも同様に材料から製造まで自社で賄ってバッテリー製造を実現することを視野に入れている。 またテスラは、テスラオーナー向けの自動車損害保険も自社で扱っており、保険料を毎月査定して、安全運転を続ける運転者の保険料を安くするようにしている。 これが可能なのは、EVは走行にまつわる情報のすべてをインターネット経由で把握できるので、所有者1人ひとりの行動が明らかになるからだ。テスラ側は入手した情報を基に、年単位ではなく月単位で細かな保険料の調整ができるのだ。 この仕組みは、所有者が保険料を安くしようと思えば日々安全運転を励行する必要が出るので、事故の予防にも役立つとテスラは見ている。「正しく上手」にEVを利用してくれるオーナーの保険料を優遇するのは、EVの先駆者で、その機能を知り尽くしたテスラならではの発想に基づいた事業と言える。 さらに同社は、ソーラパネルや家庭用蓄電池、大型蓄電システムなどを提供して、それらを軸にした太陽光発電および蓄電事業も行っている。同社が今後、エネルギー分野でより大きな役割を担っていく可能性も十分にあるはずだ。