「東大生の就職先」にコンサルが選ばれる“身も蓋もない”理由、今と昔で違ってきた「賢い」ということの基準
今の日本で「頭がいい人」と思われているのはどんな人々でしょうか。高偏差値の大学を優秀な成績で卒業した政治家や官僚、あるいは経営者などが頭に浮かぶかもしれません。ですが、生物学者の池田清彦氏は、そうした人々が政治や経済を主導してきた結果が、現在の日本の凋落につながっていると指摘します。 そんな中、「頭がいい」の代名詞でもある東大生の昨今の就職事情がどう変化してきたのかを、池田氏の著書『「頭がいい」に騙されるな』から、一部抜粋・編集して解説します。
■竹中・小泉「構造改革」が生んだ偏見 このところの日本では、「今この時点においてもっとも短期的に儲ける」ことのできる人間がいちばん賢いという、一種の偏見が蔓延している。 これは竹中平蔵と小泉純一郎が「構造改革」を行った頃に始まった考え方だ。 会社が赤字で「その赤字を解消するにはどうしたらいいか」となったときに、いちばん簡単なのは人件費を減らすこと。つまり、正社員を減らすことだ。減った社員の分は非正規雇用者を増やして対応することで人件費は安くなるから、当面の危機的状況をしのぐことは可能になる。
たしかにそうやって赤字を減らせば、しばらくは儲けが出るのかもしれない。しかし、日本中の多くの企業がそれをやってしまうと、合成の誤謬(個々人が正しいと思って取った行動が、みんなが同じ行動を取ることで社会的な状況を悪化させてしまうこと)が起きてしまう。 正社員より給料が安い非正規雇用者が増えれば、当然、社会全体の購買力は落ちることになる。それはつまり、別の会社のつくった商品やサービスを利用していた顧客の収入が減って、購買しなくなるということである。こうしたことが積み重なっていけば、そのうちに日本全体で物品が売れなくなり、景気は悪化していく。
そして企業が「売れないから」という理由で値下げをすれば、値下げをした分をさらに人件費削減で補うことになる。 正社員であっても、景気が悪くなって会社の収益が落ち続ければ、いつまでも同じような待遇ではいられない。明日にも減給やリストラの対象となるかもしれず、そんな状況では将来設計もできないから大きな額のローンなどは怖くて組めない。余計な買い物もできず、少しでも貯金をしようとして、さらに財布のヒモは固くなる。