「ACLってなぜか人生の節目にある」川崎・鬼木達監督が語るアジアとの戦い。前大会の横浜とアル・アインの決勝に感じたこと【インタビュー5】
「監督って苦しくない時はない」
改めてACL制覇はクラブにとって、そして鬼木監督にとっての悲願である。 今大会もシーズンをまたがり、グループステージの第7戦、8戦は来年2月に開催される。その意味では来季に向けたチーム編成は難しいところで、周囲の人たちは何より指揮官の去就も気に掛けているだろう。それでも先のことは今考えても仕方がない、変わらずに一歩ずつ進むというのが、鬼木監督のスタンスだ。 「この大会を勝ち抜いても、すぐにクラブワールドカップに出場できるわけではないので(優勝賞金は従来より増えているが、クラブW杯出場権は2029年大会のものとなる)、すべての人にとって難しい面はありますよね。僕を含めたコーチやスタッフ、今の選手だって、その時クラブにいるか分からない。その意味では複雑な大会になった印象はあります。でも僕の中でアジアを獲りたいという想いは変わらないし、少なくともサポーターとクラブスタッフをクラブワールドカップに届けられるので頑張りたい。 僕も目の前の一戦一戦に全力で臨むだけです。 やるべきことをやり続けるだけですし、監督とはそういう世界。先ほどのリーグ戦の話しでも、勝ってないからすべてが駄目なわけではないですし、逆に勝っている時でも、このままでいいのかなって悩んでいた時なんていっぱいある。そこは自分にしか分からない部分もあるでしょうし、結果は出てないけど、今凄く選手が伸びているなと手応えを感じている時もある。ただ、ここで結果を残さないと、順位的な面で選手がプレッシャーを感じ、伸びにくくなってしまうと焦りを感じる時もあります。 だから監督って苦しくない時はないんですよ。上にいれば上にいたで、毎回勝ち続けるためのプレッシャーがある。それが普通なんだろうなと。逆にどの試合にもプレッシャーを感じなくなってしまった時こそ、熱量が足りなくなってしまった瞬間だと思うんです。だから僕はいつも熱量を持って、選手、周りの人を信じ、進んでいくだけです」 インタビューの終盤、鬼木監督は17年の浦和戦を含め、「ACLってなぜか人生の節目にあるんですよね」としみじみ語っていたのも印象深い。 鬼木監督にとっては7回目のアジアの挑戦。リーグ戦、ベスト4に勝ち上がっているルヴァンカップとの並行にもなるが、“鬼木フロンターレ”の熱い戦いをぜひとも目に焼き付けたい。 ■プロフィール おにき・とおる/74年4月20日生まれ、千葉県出身。現役時代は鹿島や川崎でボランチとして活躍。17年に川崎の監督に就任すると悲願のリーグ制覇を達成。その後も数々のタイトルをもたらした。“オニさん”の愛称で親しまれる。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部) ※ACLの新フォーマット 2024-25シーズンからAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)、AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)、AFCチャレンジリーグ(ACGL)の3つのレベルの大会に再編。 ACLEはこれまでより少ない24クラブの出場で、グループステージは東地区、西地区それぞれ12チームに分かれ、8クラブと1試合ずつ対戦(ホーム4試合、アウェー4試合)。各地区上位8クラブがラウンド16(東地区の1位対8位など各地区内の順位によって対戦相手が決定)に進出し、ホーム&アウェーの2試合合計スコアで勝利したクラブが準々決勝へ。準々決勝から決勝は東地区と西地区が合わさったトーナメント戦で、2025年4月25日から5月4日までサウジアラビアで集中開催される予定。 優勝クラブは賞金1000万ドル(約14億6000万円)に加え、4年に1回開催されるFIFAクラブワールドカップ(2029年大会)の出場権を獲得する。 川崎はグループステージで蔚山(韓国/アウェー)、光州(韓国/ホーム)、上海申花(中国/アウェー)、上海海港(中国/ホーム)、ブリーラム(タイ/アウェー)、山東(中国/ホーム)、浦項(韓国/アウェー)、セントラルコースト(オーストラリア/ホーム)と対戦する。