“ここでしか味わえない”と人気の福岡「巴蜀」が東京・浅草へ移転!
理由は店主が来春から信州大学の大学院生となり、週の半分は同大学の松島教授のもとで唐辛子の辛みの出し方と発酵唐辛子の辛みの変化の研究をするからです。
店主の荻野亮平さんは辻調理師専門学校を卒業して、四川料理の名店であった千駄木「天外天」で修業、1年間の四川留学を経て北九州・小倉「欣葉」で台湾料理を学び独立、「巴蜀」をオープンしました。料理それぞれ味の正解は一つだけであり、それは古くから伝わるレシピを再現することだとの考えから、提供するのは荻野さんが最も四川料理らしいと思う1980~2000年の四川料理。料理人のセンスで進化した料理を提供する店が多い中、荻野さんの作る“始まりの料理”の再現は評判を呼び、全国から人が訪れるようになりました。
修業先であった「欣葉」の張 玉輝料理長からの「レストランはおいしいものを作るだけではない。料理、言葉、文化を並行して学びなさい」という言葉が荻野さんの料理の根幹となっており、それぞれの皿には由来となった時代や文化が反映されています。
古来のレシピが生む衝撃的なおいしさ!
コースのはじめに登場するのはなんとも豪華な前菜の盛り合わせです。7種のつまみと、蒸し鶏は時代を反映した3種の調理法で食べ比べさせてくれます。こちらの前菜は四川の店で提供する「おばんざい」のような酒のつまみをイメージしたそう。
四川のホテルで食べた味を再現した「蓮根のオレンジ漬け」、魯迅の小説の中に登場する茴香豆の料理を再現した「そら豆」など、どれもふくよかで繊細な味わい。麻辣のイメージが強い四川料理の奥深さを教えてくれます。
こちらは時代別、地域別の蒸し鶏3種。「辛」は文献から1930年代に楽山の隣の漢陽覇で生まれた味、「よだれ鶏」は1980年代に郭沫若のエッセイを引用して提供したことで「よだれ鶏」発祥という説のある重慶の店の味、「塩」は荻野さんが2000年頃に食べた1993年創業の成都「廖記棒棒鶏」の味を再現しています。食べ比べると他にも違う味があるのだろうか、棒棒鶏はいつ発祥したのだろうかと興味が尽きなくなります。食事をするだけでなく料理の背景にある文化や歴史を知ることができるのもこの店の楽しさなのです。