“ここでしか味わえない”と人気の福岡「巴蜀」が東京・浅草へ移転!
圧力をかけて膨らませた米に牛肉や川魚を合わせる重慶の料理をアレンジした「海老の米炒め」は、揚げた米を赤と緑のピーマン、クミン、青山椒、唐辛子、揚げニンニク、ねぎ、生姜と炒めています。驚くのは米の食感がサラサラだということ。油で揚げてからさらに油で炒めているのに、食べ終わると美しい絵皿が現れてうっとり。これは何か秘密があるに違いないとさらに問うと……。
「サラッとしたものにねぎや生姜の香りはできるだけ油を取った状態でないと移っていかないんです。コツは高温でサッと揚げることと、ピーマンとねぎと生姜の水分を飛ばしてからスパイスを入れること」と荻野さん。いつまでもサラサラ、サクサクした食感に箸が止まりません!
中国料理の定番である「フカヒレの姿煮」は店ごとにソースの味が異なるのが魅力の一つ。荻野さんのソースは台湾料理に由来します。定番料理だけに何か他とは違う味にしたかったと選んだのが、修業先の「欣葉」で学んだレシピ。なんと日本統治時代から台湾に普及した鰹の出汁を使っているのです。
ヨシキリザメの尾ビレはしっかりとした食感を残しつつやわらかでふっくら。中央部分は金糸一本一本を確かに感じ、端に向かってゼラチン質が多くなりプルプルでとろけます。そのフカヒレにとろとろの豊潤なソースが絡むと口中に鰹節の風味が広がり、この料理を食べ慣れた人たちの予想をいい意味で裏切るのです。懐かしいのに新しさを感じる、これが古来のレシピだったとは驚きます。
本日の魚料理は四川眉山出身の蘇東坡が2000年前に母の味を思い出しながら好みの味付けにしたという説のある豚の角煮「トンポーロー」の魚バージョンである「トンポーユイ」です。
発酵唐辛子、ヤーツァイ、豚肉などを炒めてから鶏がらスープを加え、素揚げしたイサキを煮込みます。最後に鍋をゆっくりと大きく回しながら水溶き片栗粉でとろみをつけていきます。
かなり辛いと感じるのに不思議と痺れが口に残りません。「唐辛子の使い方を考えています。しっかり炒めると一口目は辛みがあってもスパッと消えて後に残らないんです。それとしょっぱくならないように意識しています」と荻野さん。これはクセになります。