車いすで酸素マスク でも歌いきった葛城ユキさん 酒豪、居酒屋には確認後に入店 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<28>
《芸能事務所「有限会社あずさ2号」の社長として、初の所属歌手「狩人」の再ブレークに成功。背景には当時、極秘とされていた出演料を明記したダイレクトメールの送付やゴミ拾いでの新曲PRなど、業界の常識を打ち破る試みがあった》 【写真】歌手の葛城ユキさん 「ボヘミアン」が大ヒット 事務所は徐々に認知されていきました。で、僕が大好きな「雨」を歌う三善英史さんが所属歌手になってくれたんです。三善さんの加入で、事務所名を「夢グループ」に変えた。狩人はほっとしていましたね。目立つことが苦手な狩人は領収書をもらうとき、「宛名は『有限会社あずさ2号』で」とは言いづらかった、と。平成18年3月に狩人のデビュー30周年公演を東京ドームで開催したのですが、合わせてプロ野球OBチームの試合を主催して2万人のお客さんに来ていただきました。 イベントも好調で、「夢グループ」にはタレントさんが入ってきてくれました。まずはチェリッシュです。次は誰かというと、松方弘樹さん。「社長、チェリッシュがいるのか。じゃあ俺も入るぞ。一緒にシルクを世に出したからな」って。その後は千昌夫さんで、「同じ東北だ。サポートするよ」。小林旭さん、黒沢年雄さん、橋幸夫さんらが所属になってくれました。 《主催する「夢スター歌謡祭」にヒット曲「ボヘミアン」の葛城ユキさんも参加》 葛城さんは酒豪でね。ステージが終わると必ずお酒です。ビールなら毎晩、大瓶20本以上は飲む。いつも明け方までなので、僕はもうクタクタなわけです。地方公演のときは、居酒屋に葛城さんがいないことを確認してから入店していました。でもどんなに飲んでも翌日はいつもの熱いステージです。そのプロ精神には驚きましたね。 その葛城さんに異変が見つかったのが3年前。所属歌手の体調不良が続いたので、みんなに「人間ドックの受診を」と促したんです。ある日、バスで移動中、僕の後ろに座った葛城さんが「社長さま、ちょっと相談が」と。葛城さんは僕のことを「社長さま」って呼ぶんです。で、「検診でがんが見つかりました」と言う。 葛城さんはいつもと変わりません。早期発見と思った僕は「よかったね。早く治そうね」と言ったら、余命3カ月だと。慌ててエックス線写真を別のお医者さんに見てもらったら、今度は余命1カ月…。末期の原発性腹膜がんで、転移しているとのことでした。
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