柔道阿部詩選手に感じた「お家芸」のつらさ、伝えたかった「ありがとう」の思い 「キング」内村航平さんが見たパリ五輪、そして五輪の意義
8月11日に閉幕したパリ五輪で、NHKのアスリートナビゲーターとして現地に入りました。2008年北京から2021年東京まで4大会連続で出場した五輪を取材するという新たな挑戦。最初はどこか人ごとに考えていましたが、いざ始まってみれば、勝負の奥深さや視聴者へどう伝えるのかという責任にどっぷりつかりました。私自身、1年延期となった東京五輪以降、考え続けてきた「五輪の意義とは」という問いにも答えが出せた、そんな17日間でした。(聞き手 共同通信=藤原慎也) 【写真】誹謗中傷の連鎖、傷つく選手たち SNS事業者、対策強化が急務
▽「しつこい」萱の姿勢がチームに伝染 何と言っても体操男子です。団体総合で金メダルを奪還した日本はすごかった。5種目を終えてトップの中国に3・267点の大差をつけられながらの大逆転。最後の最後まで何が起こるか分からないというのは、どんなスポーツでも言われますが、体操は特にそれが起きやすいスポーツです。体操の面白さ、諦めないこと、助け合うことの大切さを5人が伝えてくれた。 ミスをしないことに対して、日頃から貪欲にやってきたからこそ、あの勝ちが生まれたと思っています。しつこさの勝利です。特に萱和磨(セントラルスポーツ)はしつこい。「もうそれでいいじゃん」というところから、さらに突き詰める。私も毎年のように「おまえの練習は本当にしつこいな」と言ってきました。この姿勢がいい形でチームに伝染していった。本当にいいチームでした。 ▽慎ちゃんの無双可能性と、勝ち続ける難しさを知った大輝 まあ、それでも今回は「慎ちゃん」の五輪ですね。個人総合と鉄棒を合わせて3冠に輝いた岡慎之助(徳洲会)です。愛されキャラで、きっと誰からも好かれると思っています。浸透すればいいなという思いから、あえて私もテレビでずっと「慎ちゃん」と呼んで推していきました。
1大会3冠は1972年ミュンヘン五輪の加藤沢男さん以来、52年ぶりの快挙です。現在の難しいルールの中で三つ取るのは本当にすごい。平行棒も『銅』。狙ったメダルを全て取るというのは僕もできなかった。嫉妬するほどにうらやましい。五輪に愛されてましたね。2年前の右膝前十字靱帯断裂を乗り越えた選手です。つらいことも嫌なことも全て受け入れてきたからこそ、ここで一気に開花したんだと思います。 人気漫画「鬼滅の刃」の主役「竈門炭治郎」は戦いのさなかに成長します。まさに慎ちゃんがそれでした。初出場のわくわく感、ミスができない重圧、世界のトップに挑む闘争心。それらを全て力に変えて予選、団体総合、個人総合、種目別の決勝と戦いの中で進化していった印象です。 柔軟性、瞬発力、着地の正確性、そして演技の美しさ。これだけ兼ね備えている選手はいない。伸びしろもかなりあり、今後無双できる可能性を十分秘めています。6種目でミスのない橋本大輝(セントラルスポーツ)にはまだ勝てていない。ここを乗り越えた時、五輪以上の慎ちゃんが見られると思いますが、橋本も黙っているわけがありません。
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