IOCの「抜本的決断を下す必要がない」表明に対して批判の声…スペイン五輪委員会会長は「五輪延期が望ましい」
IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長は17日(日本時間18日)、「パンデミック」と宣言された新型コロナウイルスの感染拡大の影響で通常開催が危ぶまれている東京五輪について、各国際競技団体との緊急電話会議を開き、現時点で、延期、中止の考えはなく、当初の予定通り通常開催を行う方針を示した。IOCは公式サイトで「開幕の4カ月以上も前の段階で抜本的決断を下す必要はない。いかなる憶測も現時点では非生産的だ」と表明。延期、中止を求める声が高まるムードの”火消し”に走った だが、このIOCの姿勢に批判的な声もあがった。 英国のBBCが伝えたところによると、IOC委員で、冬季五輪で4大会連続金メダルを獲得しているカナダの伝説的アイスホッケー選手、ヘイリー・ウィッケンハイザー女史(41)が、「東京五輪を開催するとの計画は、無神経で無責任だ」と強烈に批判したという。 同女史は、ツイッターで「アスリートの立場として、選手たちが今感じている不安や、胸が張り裂けるような思いを想像し、理解しようとすることしかできない。選手たちは、トレーニングができず、観戦者は旅行もできない。スポンサーや商売人も敏感になってビジネスができない。IOCがかたくなに予定通りの開催に向け押し進めることは、無神経で無責任だと考える」との意見を訴えた。
スペインの五輪委員会会長も五輪延期を要望
さらにBBCによると、各国際競技団体との電話会議を終えたIOCが、「抜本的な決断は計画していない」と表明したことを受けて、スペインのオリンピック委員会のアレハンドロ・ブランコ会長が、「選手に十分に準備する機会を与えるために五輪は延期することが望ましい」と、延期を要望したという。 スペインでも、1万人以上に感染者が拡大しており、「警戒事態宣言」が政府により発令された。 ブランコ会長は、「毎日、耳にする(新型コロナウイルス関連の)ニュースは、世界のすべての国にとってつらいものばかりだが、最も重要なことは、競技選手たちが練習できないこと。このまま五輪を予定通りに行うのであらば、不平等な状況を生むかもしれない。五輪は開催したいが、安全が保障された状態でなければならない。我々は世界の重要な国の1つだ。五輪前4カ月の段階で、選手たちは、対等な状態で(五輪を)迎えることができない」と、世界中の五輪予選が、次々と延期、中止に追い込まれ、アスリートの準備が万全ではないことを「延期要求」の理由として挙げている。 あ また海外メディアも批判的論調でIOCの動きを捉えた。 アイリッシュタイムズ紙は「IOC、2020年の東京五輪に“抜本的な決断は必要なし”と発表」との見出しを取り、「IOCの目標は7月24日の開会式のままだが、状況は変化しているとも話している」と伝えた。 記事はIOCが行った各国際競技団体との緊急電話会議の内容を「警戒感や不確定要素が増えているにもかかわらず、IOCは、今夏の東京五輪について『抜本的な決断はこの段階では必要ない』と断固として主張。すべての選手たちに通常通りの準備を続けるように奨励した」と、伝えた上で、まだ全競技の57%しか東京五輪の代表が決まっていない現状を問題視した。 「各国際競技団体は、7月6日までに最終的な参加者を決めなければならない。だが、ボート、自転車やボクシングといった五輪競技のいくつかは、東京五輪予選を短縮、延期している。特に注目されているのが、米国の陸上の五輪選考会だ。今のところチケット販売は中断されているが、6月19日から28日までオレゴン州ユージーンのヘイワードフィールドでの開催が予定されている。ただ、多くの米大学スポーツが6月までの残りシーズンを中止している。米国陸上五輪選考会が延期されれば、必然的にIOCは対応を余儀なくされ、東京五輪も2020年後半か、その先に延期されることになるかもしれない」と、改めて延期の可能性を示唆した。