〈解説〉ストーンヘンジの祭壇石がスコットランド産と判明、その深い意味とは
石材もオールブリテンの規模に、新石器時代に栄えたオークニー諸島と結びつきうる初の根拠
100年以上にわたる探索の結果、研究者たちはストーンヘンジの中央に横たえられた「祭壇石」の起源を突き止めた。鉱物の年代と化学的性質に基づき、この石がストーンヘンジから750kmも離れたスコットランドから来ていることを、英アベリストウィス大学の地球科学者であるリチャード・ベビンズ氏らは2024年8月14日付けの学術誌「ネイチャー」に発表した。 ギャラリー:英国の世界遺産ストーンヘンジ 写真9点 英エクセター大学の考古学者であるスーザン・グリーニー氏は、研究チームが祭壇石の起源をスコットランドのはるか北東部と特定したことに胸を躍らせている。スコットランド北東部なら、新石器時代の文化と活動のホットスポットと考えられているオークニー諸島だった可能性もある。イングランド南部のソールズベリー平原でストーンヘンジの建設が始まったのは、オークニー諸島が栄えたのと同じ約5000年前のことだ。 「今回の発見は、これまでは仮説のようなものでしかなかった2つの地域の結びつきの根拠となるものです」とグリーニー氏は言う。なお、氏は今回の研究には関与していない。
イングランド、ウェールズ、そしてスコットランド
古代人たちはなぜ、どのようにしてストーンサークルを建設したのかという疑問は、長年、研究者たちを悩ませてきた。石材の調達先も、そうした疑問の1つだ。 最近の調査によって、ストーンヘンジの象徴的な外輪を構成するサーセン石(砂岩の一種)は、ソールズベリー平原から北に25kmほど離れた場所に起源をもつことが判明している。 ストーンヘンジのブルーストーン(玄武岩の一種)は地元の石ではなく、1920年代頃からウェールズ産の石ではないかと言われてきた。実際にブルーストーンのいくつかがストーンヘンジから約230km離れたウェールズ南西部の露頭(岩が地表に現れている場所)に由来していることを2019年に突き止めたのは、当時英カーディフ国立博物館に所属していたベビンズ氏だった。 ベビンズ氏によると、1870年代から1880年代にかけて祭壇石の起源を特定しようとする試みがあったものの、これまで謎のままだったという。ちなみに祭壇石という名前も、その置き方が祭壇を連想させるためにこう呼ばれているだけで、本当の用途はまだ分かっていない。 「祭壇石は、その重さも、大きさも、岩石としての種類も、ストーンヘンジの中での位置も、ブルーストーンとは違っています」と氏は言う。