「これが私たちのリアル」くれいじーまぐねっとがZ世代女性YouTubeクリエイターを代表して“女性のからだの悩み”を発信する理由
“期限切れJK3人組”のキャッチコピーで、抜群の知名度を誇るYouTubeクリエイターグループ・くれいじーまぐねっと(以下、くれまぐ)。見た目も個性もバラバラな3人だが、その仲の良さと、素の掛け合いで生まれる笑いが人気を呼び、現在のYouTubeチャンネルの登録者数は208万人を誇る。(2024年8月19日時点) 【写真】くれいじーまぐねっとの撮り下ろしカット そんなくれまぐは、2023年5月に『女性からだ推進大使』に就任。自身のチャンネルを通して、女性のからだのリアルな悩みについて向き合っている。メンバーのUraNは2023年3月に出産を経験。その様子も動画で投稿し、542万回再生と大きな反響を呼んでいる。 視聴者の声を吸い上げるだけではなく、自身のライフイベントやからだの変化も隠さず見せていく彼女たち。どうしてここまで曝け出し、発信しようと思ったのか。3人が実際に体験したエピソードから、その想いを聞いた。 ・動画で発信した女性特有の悩み 視聴者の“声”が活動のきっかけに ーーみなさんは2023年5月に『女性からだ推進大使』に就任されました。改めて、大使としての具体的な活動内容を教えてもらえますか? UraN:世の女性に対して、社会的活躍や健康管理についてプラスになるような情報発信をしていくのが、主な活動です。女性のからだに関する私たちの発信を通して、生理やPMS(月経前症候群)などで悩んでいる人の心に寄り添えたらいいなと思い活動しています。 たとえば2023年の6月には、女性からだ情報局さんと一緒に『女性からだ教室~15歳:思春期に学ぶ生涯ヘルスケア~くれまぐ特別編』という動画教材を作らせていただきました。健康管理について学ぶ60分の動画なのですが、そこにうちのエアが出演させてもらったんです! ーーエアさんはどんなポジションで出演されたのですか? エア:どんな人でも聞き入れやすいように、実際に私がいろんな立場の役になりきって解説をしています。アナウンサーや幼稚園児、ギャル、オタクとか……。いろんなキャラになりきるのがなかなか難しかったですね(笑)。 UraN:ふざけてるのはエアちゃんだけで、内容はとてもしっかりしたものなので安心してください(笑)。 エア:でもいろんな役になりきって伝えることによって、よりわかりやすく噛み砕いた説明ができたかなと思います。私自身も学ぶことがすごく多かったし、貴重な機会だったなと思いました。 ーービデオ教材のほかに、MCとして出演する『TGC teen 2024 Summer supported by UP-T』では、婦人科への受診についても話す予定と伺いました。 UraN:いま、中高生の女の子に婦人科を受診しやすい環境を整えることを目的とした、「JK(女性からだ)クリニック」というプロジェクトを進めています。病院って、そもそも行くまでのハードルが高いじゃないですか。しかもからだにまつわる悩みはなかなか周りに相談もしづらいと思うし……。あと、最初はどこのクリニックに行ったらいいかもわからないですよね。その壁を超えてもらうために、「JKクリニック」というプロジェクトを立ち上げました。 当日会場では“JKクリニックカード”というものをお配りして、口にしづらい自分の症状をそこにメモして、先生のところに持っていけるようなものを作っています。親に恥ずかしくて相談できない気持ちもすごくわかるので、自分のプライベートを守りつつ受診の背中を押せるようなものになっています。 ーー『TGC teen 2024 Summer supported by UP-T』に来場する方は若い世代が中心だと思うので、まだ検診に自分で行ったことがない人も多そうですね。そもそもなぜみなさんは『女性からだ推進大使』として活動を始めたのでしょうか? UraN:『女性からだ推進大使』になる前から、もともとYouTube動画で生理や女性特有の悩みについて日常的に話題に上げていたんです。大々的にテーマに掲げているわけではなかったんですけど、トークをするなかで「生理2日目しんどいわ」みたいな会話が少しだけあって。動画を振り返ってみたら、そのシーンへのコメントや反応がとても多かったんです。私たちも、視聴者さんの反応でそういった発信が求められていることに気づきました。 それから事務所の人に、そういう活動ができないかと私たちからお話して、女性からだ情報局さんとパートナーを組むことになり、いまの活動につながっているんです。 ーー動画での反応がきっかけだったんですね。 UraN:そうですね。私たちだけで発信するよりはちゃんと専門の先生のお話を聞いて、正しい情報を届けたいという想いがあったので、女性からだ情報局さんと一緒に発信をさせていただくことになりました。ネットで調べられることって限られてくるし、ちゃんとした正しい情報発信をするなら、専門的知識があり信頼できる先生たちの力が必要だと感じたんです。 あと、からだについての情報ってどうしても堅苦しく感じがちだと思うんです。そこで私たちYouTubeクリエイターがあいだに入ることで、みんなに近い言葉で、もう少し柔らかく届けられるのではないかと思いました。クッション的役割というか、ちゃんと伝えたい情報はあるんだけど、“伝え方”の部分で私たちが力になれるんじゃないかなと思ったんです。 ーーなるほど。以前からからだの悩みについてオープンに発信していたくれまぐさんなら、マッチしているかもしれませんね。 UraN:私たちは動画でけっこうなんでも映していて、しんどそうな姿とか、エアちゃんが生理中、クッションに横たわってるところも映してるし(笑)。リアルな姿をお届けしているので、みんなから共感をもらったり、同じ体験をしている人からお声をいただいたりもしています。そんな私たちだからみんなの心に寄り添えるんじゃないかなと思ったのも、活動を始めたきっかけのひとつです。 ・病院は「なにをされるかわからない」から怖い ーーくれまぐさんは、実際に検診などには行ってるのでしょうか? エア:2週間に1回くらいは行ってますね。検診もそうですが、体に何か少しでもおかしいなと感じたところがあれば、すぐ行くようにしています。 浅見めい(以下めい):でもほんと、行けるようになったのは大人になってからだよね。 ーー行けるようになったきっかけなどはあるのでしょうか? UraN:2、3年前くらいだったと思うんですけど、めいが婦人科検診に行ってきたって言ってて。それを聞いて私も一応検査しておこうかな~という感じで行ったのが始まりです。 めい:私が行った病院と同じところを教えたら、UraNも「行ってみるわ」みたいな感じで行き始めました。 ーーめいさんはなぜ行こうと思ったのですか? めい:自分のなかで少しおかしいかもって思った症状があったので、行き始めたんです。それまで検診はわざわざするほどでもないかな、という感覚だったんです。でも実際行って薬を飲んだらすぐ治って、「病院って心強い!」と、改めて行くことの大事さに気づきました。そこからは、なにか症状がなくても定期的に検診に行くようになりましたし、ちょっとでもおかしいなという程度でもすぐ行くようにしています。 UraN:私も以前は本当にみんなと同じというか、症状がないなら悪くないだろうっていう考え方でした。生理痛の重さとか出血の量もそこまで違和感を感じていなかったし、検診に行く行かないの概念すらなかったんです。婦人科は、妊娠や出産とかそういう機会に行くものというイメージでした。でもめいが行ったのを聞いて私も婦人科検診に行ったら、ポリープが見つかったんです。 UraN:親指サイズくらいのポリープだったんですけど、もう少し大きくなっていたら悪性に発展する可能性もあったので、本当に行ってよかったなと思いました。そのとき不正出血の症状があったので、「あ、これが原因だったんだ」と病院に行って初めてわかったんです。 ーーそれは本当に行ってよかったですね。 めい:自分も検査をして初めて、コレステロールの数値が高かったことを知りました。症状としてはなにか出てるわけではなかったんですけど、いま思えば甘いものとか揚げ物とか食べすぎてたのかな。 UraN:めいはパッと見、健康に見えるもん。動画では3人のなかで私が1番悪い結果だろうと予測されてたんですけど、実は1番健康だったんです。血液も綺麗だったし、数値も正常で……。お医者さんには「ただの肥満」って言われました(笑)。「太っててコレステロール値が正常なのも珍しいですよ」って。逆に「なんで太ってるんだろう?」って首を傾げてました(笑)。こっちが聞きたいんですけど! ーー検査をすると意外な結果が見えてくるんですね(笑)。エアさんはどうですか? めい:エアも最初私と同じ病院に行かなかったっけ? 個室で2人一緒に先生から説明を聞いたよね。 UraN:うちらはなにかと同じ病院に行きがちだよね。歯医者とかもそうだし。 エア:そうだったかも! UraN:エアはもともと病院には頑なに行きたくないっていうタイプだったんですけど、めいが行くっていうからついていったんです。 めい:しかもエアは、自分が言いたいことをなかなか言えないんですよ。お医者さんと対面すると、言いたいことを隠しちゃう。 エア:そうなんです……(笑)。強がって大丈夫って言っちゃいます。 めい:だから事前にうちらがエアに症状や伝えたいことを聞いて、現場で代わりに伝えるんです。 UraN:こうだったでしょ? ってね(笑)。エアは病院に限らず、美容院とかネイルサロンでも、その場でなかなか正直に言えないタイプなんですよ。 エア:病院系は特に、“なにをされるのかがわからない”のが怖いんですよね。椅子に座ってなにされるのかな、とか、絶対座らなきゃいけないの? ってなっちゃいます(笑)。 ーー視聴者のなかにも、同じ恐怖を抱いている人はいるかもしれませんね。 エア:そうですね。でもそんな私も、いまではひとりで病院にも行けるし、このあいだは婦人科ではないんですが病院へ行くことがありセカンドオピニオンもしました。1日で3回も違う病院に行ったんですよ。 ーー3回もですか⁉︎ エア:1回目の病院で、先生に「わからないです」って言われたんですよね(笑)。私がわからなくて病院に行ってるのに、「あんたもわからないのかーい!」って心のなかでツッコミました(笑)。 一同:爆笑 UraN:でも前のエアならそこで絶対諦めてたから、すごい成長だよね。 エア:そうだよね。私は4月に耳の手術を経験したんですけど、そのときもっと早期発見ができていたらここまで大掛かりな手術にはならなかったらしいんです。だからいま思えば、セカンドオピニオンをしっかりしておけばよかったなと思います。本当に勉強になりました。 UraN:こんなふうに、私たちのリアルな体験を発信したり、受診している様子を撮影したりすることで、視聴者の方に病院に行く勇気を少しでも分けてあげられるかなと思っています。エアみたいに、病院はなにをするかわからないから怖いと思ってる人はたくさんいるので、実際に私たちが行くことで不安が少しでも取り除けたらいいですね。 ・私たちはみんなと一緒 ーーくれまぐさんは、検診や実体験など、本当にリアルな姿を動画で見せていますよね。 UraN:私たちはけっこう赤裸々に語りまくってるので、リアルな姿を届けられるのは強みです。検査の様子だけではなくて、生理用品のナプキンとかサニタリーショーツも動画で紹介してるし……。逆に視聴者さんから、便利アイテムを教えてもらうこともあります。このあいだはスティックタイプの消臭剤を教えてもらって、速攻Amazonでポチってエアとめいにあげました(笑)。 ーー視聴者さんから情報をもらうこともあるのですね。リアルな姿を曝け出すことに、最初抵抗はなかったんですか? UraN:最初はやっぱり、元気な姿を見せるのが私たちの仕事だと思っていました。でも実際は生理2日目で辛かったり、PMSでしんどいときもあるんです。でも昔は動画を撮影するあいだだけは切り替えて頑張ろう! と思いながら撮影をしてました。 エア:でも限界があるよね(笑)。 UraN:なんか顔も引き攣っちゃうっていうか。 めい:だんだん逆に言った方がいいよねってなったんだよね。言わないまま撮影してテンションが低かったりすると、不機嫌なの? って心配もされちゃうし。それからはありのままを伝えるように心がけています。 UraN:エアはインスタグラムのストーリーでも「2日目でしんどいけど頑張ろう」とか、「今回の生理重くてやばいかも」とタイムリーな状況を発信してるんですよ。 エア:そこまでさらけ出してる人、あんまりいないですよね(笑)。 UraN:さらけ出しすぎじゃない? って思う人もいるかもしれないんですけど、その投稿を見て「頑張れる」とか「エアちゃんもしんどそうだから私も頑張る」って声もあって、そう思ってくれる人がこんなにもいるなら、やっぱり発信していくべきだなと思うんです。 UraN:でもたまにコメントで、「また生理の動画?」とか言われることもあるよね。 エア:「エアちゃんまた生理?」とか「毎日生理なんじゃない?」とかめっちゃ言われるよね(笑)。 UraN:でも3人でいると、誰かしら生理なんですよ(笑)。生理が終わったあとの1週間を“キラキラ期(卵胞期)”っていうんですけど、3人とも“キラキラ期”が被ることなんて本当に稀で。そもそも女の人の体で調子がいい期間って、1か月のなかで1週間くらいしかないじゃないですか。でもそれがリアルというか、本当の姿なので。 ーー3人いれば、症状も異なりますしね。 UraN:ほんと人それぞれですよね。私は生理中けっこう構って欲しいタイプなんですけど、エアとめいは一切かまって欲しくないタイプなんです。会ったらぶん殴っちゃうかもってぐらい(笑)。そういうのも見せて伝えることで、からだって教科書通りっていうわけではないんだよっていうことを知ってもらえたらいいですね。 ーーとくに生理に関しては、なかなか言語化しづらい部分がありますよね。 UraN:そうですね……。私は痛みとかモヤモヤ、イライラって、男性には伝わりづらいと思ってるんですよ。なぜなら、男性の方は絶対に体験することができないから。でも知識としてちょっとでもわかってもらうだけで違うのかなと思っています。私たちのチャンネルの視聴者は女性の方が8割なんですけど、見ている人を通してパートナーの方にも知ってもらえたら嬉しいです。私たちの動画を代弁者として使ってくれてもいいですよね。 ーーリアルな姿と言えば、2023年7月にはUraNさんの出産の様子も投稿され、かなり話題になりましたよね。撮影することは以前から決めていたんですか? UraN:頼まれたわけでもなく、自分でカメラを回しました。記録としても残しておきたかったし、YouTubeクリエイターとしての使命感もありました(笑)。子どもにも大きくなったら「こういうふうに生まれてきたんだよ」って見せることができるし、YouTubeクリエイターだからこそできることかなと。1番陣痛が痛いときにフリッカー(室内撮影で光源が目に見えない速さで点滅している現象)を気にしてましたもん。「ちょっと設定変えて欲しいかも!」みたいな(笑)。 ーーそれはすごいですね(笑)。 UraN:でもその動画がきっかけで、ママ世代の方がたくさんコメントしてくれたんです。「実は動画を見ていたんですけど、若い子が多くてコメントできなかったんです」という人がめちゃくちゃいて。それはすごく嬉しかったですね。 ーーこれからも、自身のライフイベントについては発信していきたいと思いますか? UraN:動画を見てくれている子たちも、小学生だったのが高校生になってたり、最近は結婚しましたという人もいるんです。みんなもライフスタイルが変わっていくように、私たちも一緒に変わっていく姿を届けたいですね。どんなことを経験して、いまのくれまぐができているのかを見て欲しいです。 ーー印象に残っている視聴者さんの反応や言葉はありますか? UraN:実際に病院に行ってくれたという報告は嬉しかったです。しかも初期の子宮頸がんが見つかったみたいで、本当に動画を届けてよかったと思いました。だから、健康なときにこそ検査に行ってねと思います。悪いところがなかったらなかったで、それは安心材料になるので。 めい:私は、男性からのコメントが増えてきたのが印象的ですね。「彼女にどういう対応をして欲しいか聞いてみたいと思います」という声をもらったときは嬉しかったです。生理とかPMSって女性だけの問題って思われがちだけど、男性の方にも女性のからだについて知って欲しくて発信をしているので、やってきてよかったなと思いました。 エア:私は自分の身体をもって健康って本当に大事だなと感じたので、そんな私を見ながら勇気を出してくれると嬉しいです。 UraN:私たちも大人になっていきますが、3人で仲良く変わらずバカやってるところも見せつつ、みんなに共有できる有益な情報をどんどん発信していきたいと思います。私たちも病気になることもあるし、悪いところだってでてくるし、同じ人間だよっていうのを見せていきたいです。すっぴんとか、ちょっと赤裸々に出しすぎちゃってるかもしれませんけど……(笑)。みんなが自分のからだを大切にするお手伝いが、少しでもできたらいいなと思います!
はるまきもえ