地対空ミサイル「パトリオット」は崖っぷちウクライナ軍の"命綱"となるのか?
露軍はこちらの位置を掴んで撃ち返しても、すでに移動している状態になる。 「まず最前線、正面のストームZを根絶していきます。 ウ軍は露空軍からの1.5トン滑空誘導爆弾の爆撃が使用できなくなるので、バンカー(掩体壕[えんたいごう])や屋根付きの塹壕が破壊されずに残っています。一方、露軍は突撃して、そこに掘っただけの塹壕です。 ここでは、米国から届いた豊富な砲弾、155m榴弾砲と105mm榴弾砲を使い、上空で爆発して散弾になる射法で綺麗にしていきます。露軍の残存兵は無人ドローンFPVを突っ込ませて、自爆することで除去します」(二見氏) 最前線の露兵とストームZが一掃される。しかし、ハルキウ戦線の背後はロシア自国領なので、露軍はすぐに再集結が可能だ。この状況を日本に置き換えるなら、たとえば、露軍が北方領土から北海道東部・標津町の辺りに上陸すればロシアと陸続きになり、すぐに次の部隊を北方領土から送り込んでくるのと同じだ。 「道東の戦いでは策源地を米軍が叩き、国内の防御戦を自衛隊が行なうようになっていました。しかし、策源地を叩く理解が進み、長距離ミサイルやドローンが開発されれば、航空攻撃とともに着上陸のために使用する港湾、航空基地、集結部隊、鉄道など兵站基地を破壊しなければ、後続部隊の上陸を許してしまいます。米国が他正面の対応をする必要がある情勢の場合、独自の日本国土防衛のための能力と運用を考えておかなければなりません」(二見氏) ウ軍の対露軍防衛戦から、自衛隊は多々、学ぶ所があるようだ。 「露軍に兵力を集中させる時間を与えてはいけません。最前線から2~3km後方の森の中で、一個小隊30名が集まっています。そこの中央は105mm榴弾砲で撃ち、脇は82mm、120mm迫撃砲で叩きます。たとえ露兵が塹壕や掩体壕に隠れていても、FPVドローンで探します。ドローンは重さ1ポンド(約0.45kg)から3ポンドの爆薬を搭載できます。これで迫撃砲弾から逃れた露兵を探して潰します」(二見氏) 3km以内ならばFPVドローンは自由に動ける。 「まだ安心できません。その後方、最前線から10kmには露軍中隊がいます。ここで、最前線から2~3kmの露軍と、10km辺りにいる露軍を火力により分断します。いわゆる火力による国境線を作ります」(二見氏) 「火力による国境線」とは何なのだろう? 「105mm、155mm榴弾砲、120mm迫撃砲などのさまざまな砲弾を使って、横線を引くように作る火力統制投射線です。最前線と10km後方の分断だけでなく、その近くにいる露軍を孤立させます」(二見氏) 6月17日にはウクライナ北東部の街・ボウチャンスクの骨材工場で、露軍がウ軍に包囲されているとの報道があった。分断した最前線から10kmにいる露軍はどう動くのだろうか? 「ここはまず、米国製自爆突入無人機・スイッチブレード300で、アンテナを林立させている指揮車、または指揮所になっている装甲車、トラックを破壊します。すると露軍の部隊は混乱します。 その直後に、射程10kmで最大の威力を発揮する105mm榴弾砲2門から16発、120mm迫撃砲から6発、計22発の速射を叩き込んで潰します。その頃にはウ軍の砲兵部隊は陣地変換しているので、砲撃した地点にはいません」(二見氏)